知っていればその時役立つ話-その3-

9 より有効なリハビリテーションを求めて それは 休日のないリハビリテーション です マンスリー済衆館だより 希望 第102号(2015年9月号)より 入院期間を極力短くしてかつ効果的・効率的な治療を進めていくためにリハビリテーションの分野におい ては、昨今、運動を頑張るという精神論ではなく、筋力・筋肉量、脂肪量、嚥下(飲み込み)、生活動作など検 査・評価を実施し科学的に結果の見えるリハビリが求められています。また、脳卒中、がん、骨折、心疾患、呼 吸器疾患などの治療・診療にも非薬物療法・術後療法としてのリハビリに関心が集まっています。 【まずは入院早期からのリハビリテーション】 リハビリの進歩により、糖尿病、心疾患、呼吸器疾患、腎臓病、整形外科疾患、神経難病、がん、低栄養、 認知症など、時代とともに変化し対象疾患の幅も広くなっています。心電図モニター、人工呼吸器、点滴治療な どが行われている状態から急性期リハビリが開始されることもあります。リスク管理をしっかりと行いつつ※1 廃用症候群の予防と早期離床、機能訓練をすることは早期機能回復にとって非常に重要です。 術後など栄養摂取できない患者さまにおいては、回復が遅れ入院期間が長期化することがあります。この場 合、CT、MRI、心エコー、血液検査データなど、各種検査等を基に情報を整理し、リハビリ評価を加えて訓練 方針とプログラムを立案し、リハビリを行っています。 リハビリテーションを支えているメンバーは、理学療法士(PT)、作業療法士(OT)、言語聴覚士(ST)で す。急性期では早期回復を目指したリハビリが行われます。 ○理学療法士(以下PT)は、離床などを通じて持久力、筋力、座位・立位など身体機能の評価・訓練を行い、 過度の安静による廃用症候群を予防します。 ○作業療法士(以下OT)は、移乗やトイレなど日常生活動作(以下ADL)、※2高次脳機能などの評価・訓練 を行い、生活動作の不活発も予防します。 ○言語聴覚士(以下ST)は、摂食・嚥下評価、嚥下造影検査(VF検査)を行い、経口摂取の可否を評価しま す。加えて体成分分析装置による筋肉量、水分量、脂肪量測定を行い、栄養と運動によるエネルギー消費バ ランスの崩れによる※3サルコペニアや褥瘡の発生リスクの評価を行います。 【次に回復段階から退院までのリハビリテーション】 急性期治療を終了した患者さまのうち、家庭生活や社会復帰に向けたリハビリが必要な方は、地域包括ケア 病棟または回復期リハビリ病棟へ移られ、退院後の生活を想定した実践的なリハビリが行われます。 ○PTは、具体的な自宅内や行動範囲を設定し、歩行スピード、立位バランス測定等評価などを交えながら訓 練を行います。 ○OTは、個別性が高い日常生活もADL評価やいわゆる生活行為向上リハビリテーション等により、目標を具 体化・明確化します。 ○STは、目に見えにくい「聞く」「理解する」「話す」「構音」「嚥下」なども標準失語症検査など評価を行い数 値化し効果検証をしています。 家庭生活・社会復帰を推し進める際には、数字で表しにくい環境因子や病状・障害への理解、自己管理の 方法、介護の方法等に対して、その患者さまに合った指導を行います。自宅に退院される場合、当院では実際の ご自宅に訪問させて頂き、患者さまの身体機能や生活内容に適した段差解消や手すり設置、福祉用具利用など 環境を整える準備をソーシャルワーカーやケアマネジャー等と共同で提案させていただいております。 これらを実践するため、当院においては、医師、薬剤師、看護師、管理栄養士、PT、OT、STが一丸となり チーム医療を行っています。 平成27年7月より、当院回復期リハビリ病棟では日曜・祝日・正月も休みのないリハビリを行っています。仕 事や家事が忙しく平日は面会に来られないご家族の皆様がリハビリの様子を見学し、現状や回復具合を知っ ていただくことができます。リハビリの進行状況を知っていただければ、退院後の生活についての理解が深ま ると考えています。 職員一同『再び患者さまの日常生活を取り戻すこと』を力強く推し進めていきたいと思っています。 ※1 廃用症候群;寝たきりなどによって、身体の全部あるいは一部を使用せずにいると、全身あるいは局所の機能的・形態的障害を生じる病態 ※2 高次脳機能;大脳がつかさどる言語、記憶、認知、注意、推論、判断、情緒などの機能 ※3 サルコペニア;進行性、全身性に認める筋肉量減少と筋力低下であり、身体機能障害、QOL低下、死のリスクを伴う病態

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