知っていればその時役立つ話-その3-

8 肝炎ウイルス治療の最近の話題 ~特に目覚ましい進化をしているC型肝炎治療~ マンスリー済衆館だより 希望 第101号(2015年8月号)より B型肝炎ウイルスの発見から約50年、C型肝炎ウイルスの抗体検査が出来るようになって約25年が経ちま した。半世紀前までは結核が国民病とされていましたが、抗結核薬の出現により現在は発生数がかなり少なく なったことを踏まえ、国は平成20年から肝炎の撲滅キャンペーンを展開しています。具体的にはB型・C型肝炎 の治療の助成金交付です。 前年度の所得に応じて、肝炎の検査・治療に限って本人の医療費負担を大幅に援助する制度であり、当初 は平成27年3月までの予定であったのですが、治療法の進歩などにより平成27年4月以降もこの事業は継続 中です。 B型肝炎 では母子間の感染対策や、予防ワクチンの開発などで新しく発病することは少なくなりました。し かし、既に感染している患者さまには*核酸アナログ製剤などで病状を抑えることはできても、B型肝炎ウイル スを完全に排除することは困難で、ウイルスと平和的に共存する戦略を取らざるを得ない状態です。今まで標 準的治療薬であったエンテカビルに変わって最近テノホビルも推奨されています。テノホビルはエイズウイルス に有効であり、既に相当長期間使われた実績があり、妊娠中の女性が内服しても胎児に対する副作用は認め られないとされました。そのかわり、若干の腎障害の副作用があるため、もしエンテカビルから切り替えるので あれば、医師とよく相談して下さい。 C型肝炎ウイルス に関しては、新しい薬が続々と開発され、インターフェロンなしの内服薬のみ(インター フェロンフリー治療と称します)で高い治療効果を望めるようになりつつあります。C型肝炎ウイルスに効く薬 剤がほとんどない時期に、夢の新薬として登場したインターフェロンですが、これを健康保険で使えるように なった1992年から、C型肝炎ウイルスの排除の成績は少しずつ改善してきました。当時のインターフェロン治 療は発熱、全身倦怠感、関節痛などインフルエンザに似た副作用の出現の頻度が高く、後日開発された週1回 の注射で済むペグーインターフェロンになっても、日本人に多いC型肝炎の1型ではウイルス消失率は50%以 下でした。しかし、ここ3年ほどでC型肝炎ウイルスに直接作用するDAAと称される新世代の薬剤の登場によ り、ウイルス消失率は80%を超えています。 現在(平成27年7月)、インターフェロンなしの治療は、2種類の内服薬のみ24週間続けることで90%近い ウイルスの消失率を期待できるとされています。しかし、この薬は肝臓自体で代謝されるため、10%位の肝臓 障害の副作用があり、薬が効いてC型肝炎ウイルス自体が消失しても治療を中止せざるを得ない場合もありま す。 今年8月末~9月初に使用できる薬は、肝硬変初期の場合でも投与でき、投与期間は12週間と今までの半 分で終了し副作用は少なく、ウイルス消失率は98%以上とされています。非常に良い薬なので、一日当たりの 薬剤代は7万円を超えると予想されています。(この薬も助成金交付の対象になるとされています。)一般的に は、新薬は多くの人に使われてからでないと副作用の詳細が分らないこともありますが、この薬に限っては、世 界中のデータから有効性と安全性は信用できそうです。 以上述べたように、C型肝炎ウイルスの排除は目途が立ちつつありますが、C型肝炎ウイルスが陰性になっ てからも、頻度は低いながら肝癌の発生はありうるので、慎重な定期観察(半年に1回程度)は必要だという ことを御理解下さい。 *核酸アナログ製剤:B型肝炎ウイルスの増殖を効率よく阻害する核酸類似物質

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