知っていればその時役立つ話-その3-

5 マンスリー済衆館だより 希望 第98号(2015年5月号)より 今 気になる腹腔鏡手術 腹腔鏡手術は本当に危険なのか? 傷が小さく、痛みが少なく、術後の回復も早いなど、まるで夢の手術と言われてきた腹腔鏡手術ですが、群 馬大病院や千葉県がんセンターでその手術を受けた患者が相次いで死亡するというニュースが流れ、一気に 注目を集めています。最近は“今話題の腹腔鏡じゃなく昔の開腹手術でお願いします”とわざわざ言ってくる人 も・・・。 でも本当に腹腔鏡手術は危ない手術なのでしょうか? 腹腔鏡手術とは、皮膚に5mm~1cm程度の穴を数個開け、そこから専用の小型カメラと手術器具を挿入し て行う手術方法です。使用する器具が違うだけで、お腹の中で行われることは通常の開腹手術と同じですが、 傷が小さいため出血や痛みが少なく、その分回復が早く入院期間も短いといったメリットがある一方、手術時 間が長くなりがちで、予期せぬ合併症が起こった場合は途中で開腹手術に変更する必要があり、逆に体への 負担が増す危険性もあります。 一口に腹腔鏡手術と言っても、現在は様々な病気に対して行われており、その背景はかなり異なっていま す。 最初に確認しておきたいのは、その手術が保険適応になっているかどうかです。保険適応ということは、手 術の有効性や安全性がある程度確認され、全国で行ってよい標準手術であると国がお墨付きを与えたという 事です。今回問題になっている手術のほとんどは保険適応外であり、一般に保険適応外の手術は、保険適応 の手術に比べ死亡率が数倍高いと言われています。 ここで、保険適応外の手術を勝手にやってもいいの?という素朴な疑問が湧きますが、それは一定の条件下 で認められています。一つは臨床研究として、もう一つは先進医療として行う方法です。 臨床研究の場合、臨床研究に関する倫理指針に基づいて実施されることになっており、倫理審査委員会の 承認と患者さまへのインフォームド・コンセント(説明と同意)が必須です。また臨床研究への参加は、患者さ んの自由意志となっています。 先進医療の場合は、厚生労働省の先進医療会議が安全性、倫理性、有効性などを確認し、一定の要件を満 たす指定医療機関でのみ行われ、将来的な保険導入のための評価を目的にしています。今回は保険適応外の 手術だったにもかかわらず、これらの手続きを経ていないなどの問題点が指摘されています。 当院でも一部腹腔鏡手術に対応していますが、原則保険適応の範囲内で、患者さまの希望があった場合に 限定して行っています。 どんな治療でも必ずメリットとデメリットがあります。よく説明を聞いて、納得してから治療を受ける事が大切 です。

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