知っていればその時役立つ話-その3-

46 内閣総理大臣 安倍晋三氏を蘇らせた救いの治療法のご紹介です その病気はIBD(炎症性腸疾患)です マンスリー済衆館だより 希望 第139号(2018年10月号)より 炎症性腸疾患(IBD)の疫学・治療について 炎症性腸疾患 (IBD:Inflammatory Bowel Disease) ですが、一般的に潰瘍性大腸炎 (UC:Ulcerative colitis) とクローン病 (CD:Crohn’s disease) を示します。 あまり馴染みのない病気だと思いますが、著名人の患者さまに安倍首相がいます。安倍首相 は潰瘍性大腸炎患者さまで、中学校3年生の時に発症しています。現在は内服薬で治療を継続 していて、症状もほとんどないということです(消化器のひろば 日本消化器病学会の健康ニュー ス 2012. 秋号)。安倍首相のように多くの患者さまは10~20歳代という若い時期に発症し、症 状は下痢、腹痛、血便などが繰り返されます。腸に潰瘍ができ(図1)、それが治りきらず慢性的な 炎症が続きます。現在の医療でも完全に治癒することができず、一生にわたり治療が必要なので、国の難病に指定されて います。 欧米では古くから多くの患者さまがいました が、日本では1970年までは非常に稀でした。 しかし1970年以降、急激に患者数が増加し、 今後も増えていくと予測されています。現在の 日本にはUC患者さまが16万人、CD患者さ まが4万人で(図2)、特にUC患者数は米国 に次ぐ世界第2位となっています。 IBDのはっきりとした原因は不明ですが、 病気の発症や悪化に関係する要因は判って きています。遺伝的にIBDになりやすい人が いて、その人に病気の発症を促す因子が加わると、 免疫や腸内細菌叢に変化が生じIBDが発症すると 考えられています。1970年以後日本では急激に患 者数が増えました。1970年以前と以後の日本人に 遺伝的に大きな差はないので、1970年以後、日本人 を取り巻く環境の変化がこの病気の発症に大きく関 与していると考えられています。1970年以後の大き な変化の1つに衛生環境が改善したことがあります。 衛生環境が良くなり、乳幼児期の感染症が低下する と、免疫性疾患(気管支喘息・花粉症などの病気、 IBDも含まれます)が増加すると言われています(衛 生仮説)。その他に食の欧米化(蛋白質・脂質の摂 取増加、食物繊維の摂取減少)、薬剤(抗生物質、鎮痛薬、経口避妊薬など)の使用の増加、環境汚染や喫煙習慣などが 挙げられます。(表1) IBDの治療ですが、まず内科治療(薬物・栄養療法)を行います。しかし内科治療を行っても腸にできた潰瘍が治らない 場合、腸穿孔(腸に孔があく)を起こした場合には外科的に腸を切除します。 1900年代は使用できる薬剤は5-アミノサリチル酸製剤、ステロイド製剤、抗生剤、成分栄養剤だけでした。これらの治療 では良くならない患者さまも多く、長期間入院や手術を受ける患者さまが多数いました。2000年以降、多くの新薬や新しい 治療法が開発されてきました。(表2) 以前に比べ、患者さまの多くが入院や手術を受けずに外来で治療が可能とな り、患者さまの生活の質(Quality of life)は大きく改善しました。しかしまだ完全 に病気が治る段階ではないのが現状です。医師側の問題として、各種新薬が使 用可能となりましたが、患者さまの病状に合わせて、どの薬剤の選択した方が良い のかなど、以前にも増してIBD治療に関する専門的な知識が必要となっています。 IBDの診療に当たって、患者さまと医師の間で良い関係を築き、両者が治療方 針についてよく話し合い、個々の患者さまにあった治療を選択していくことが重要 となっています。 炎症性腸疾患について気になる症状やご不明な点がありましたら、消化器内 科外来にご相談ください。 図1 2000年 2001年 2002年 2006年 2009年 2010年 2016年 2017年 2018年 GCAP・LCAP サンディミュン レミケード イムラン プログラフ ヒュミラ ゼンタコート シンポニー ステラーラ ゼルヤンツ エンタイビオ 血球成分除去療法 カルシニューリン阻害剤 抗TNFα抗体製剤 免疫調整剤 カルシニューリン阻害剤 抗TNFα抗体製剤 ステロイド剤 抗TNFα抗体製剤 抗IL12/23阻害薬 JAK阻害薬 接着分子阻害薬 薬品名・器材名 分 類 表2 図2 潰瘍性大腸炎の年度別患者数の推移 クローン病の年度別患者数の推移 特定医療費(指定難病)受給者証所持者数 167,872人 特定医療費(指定難病)受給者証所持者数 42,789人 厚生労働省 衛生行政報告例 特定医療費(指定難病)受給者証所持者数、登録者証所持者数 より作図 注:2010年度のデータには、東日本大震災の影響により、宮城県及び福島県が含まれていない。 ※安倍首相の記事は、 に掲載されています。 検 索 消化器のひろば 炎症性腸疾患 (IBD) 腸の炎症 食 薬剤の 使用増加 生活習慣 環境 表1 IBDの発症に関与していると考えられること ●環境汚染 ●水質汚染 など ●喫煙習慣 ●ストレス など ●抗生物質 ●鎮痛剤 ●経口避妊薬 など ●欧米化 ●食物繊維の 摂取減少 など ●虫垂炎 ●感染症 など 図1 2000年 2001年 2002年 2006年 2009年 2010年 2016年 2017年 2018年 GCAP・LCAP サンディミュン レミケード イムラン プログラフ ヒュミラ ゼンタコート シンポニー ステラーラ ゼルヤンツ エンタイビオ 血球成分除去療法 カルシニューリン阻害剤 抗TNFα抗体製剤 免疫調整剤 カルシニューリン阻害剤 抗TNFα抗体製剤 ステロイド剤 抗TNFα抗体製剤 抗IL12/23阻害薬 JAK阻害薬 接着分子阻害薬 薬品名・器材名 分 類 表2 図2 潰瘍性大腸炎の年度別患者数の推移 クローン病の年度別患者数の推移 特定医療費(指定難病)受給者証所持者数 167,872人 特定医療費(指定難病)受給者証所持者数 42,789人 厚生労働省 衛生行政報告例 特定医療費(指定難病)受給者証所持者数、登録者証所持者数 より作図 注:2010年度のデータには、東日本大震災の影響により、宮城県及び福島県が含まれていない。 ※安倍首相の記事は、 に掲載されています。 検 索 消化器のひろば 炎症性腸疾患 (IBD) 腸の炎症 食 薬剤の 使用増加 生活習慣 環境 表1 IBDの発症に関与していると考えられること ●環境汚染 ●水質汚染 など ●喫煙習慣 ●ストレス など ●抗生物質 ●鎮痛剤 ●経口避妊薬 など ●欧米化 ●食物繊維の 摂取減少 など ●虫垂炎 ●感染症 など 図1 2000年 2001年 2002年 2006年 2009年 2010年 2016年 2017年 2018年 GCAP・LCAP サンディミュン レミケード イムラン プログラフ ヒュミラ ゼンタコート シンポニー ステラーラ ゼルヤンツ エンタイビオ 血球成分除去療法 カルシニューリン阻害剤 抗TNFα抗体製剤 免疫調整剤 ステロイド剤 抗TNFα抗体製剤 抗IL12/23阻害薬 JAK阻害薬 接着分子阻害薬 薬品名・器材名 分 類 表2 図2 潰瘍性大腸炎の年度別患者数の推移 クローン病の年度別患者数の推移 特定医療費(指定難病)受給者証所持者数 167,872人 特定医療費(指定難病)受給者証所持者数 42,789人 厚生労働省 衛生行政報告例 特定医療費(指定難病)受給者証所持者数、登録者証所持者数 より作図 注:2010年度のデータには、東日本大震災の影響により、宮城県及び福島県が含まれていない。 ※安倍首相の記事は、 に掲載されています。 検 索 消化器のひろば 炎症性腸疾患 (IBD) 腸の炎症 食 薬剤の 使用増加 生活習慣 環境 表1 IBDの発症に関与していると考えられること ●環境汚染 ●水質汚染 など ●喫煙習慣 ●ストレス など ●抗生物質 ●鎮痛剤 ●経口避妊薬 など ●欧米化 ●食物繊維の 摂取減少 など ●虫垂炎 ●感染症 など 図1 2000年 2001年 2002年 2006年 2009年 2010年 2016年 2017年 2018年 GCAP・LCAP サンディミュン レミケード イムラン プログラフ ヒュミラ ゼンタコート シンポニー ステラーラ ゼルヤンツ エンタイビオ 血球成分除去療法 カルシニューリン阻害剤 抗TNFα抗体製剤 免疫調整剤 カルシニューリン阻害剤 抗TNFα抗体製剤 ステロイド剤 抗TNFα抗体製剤 抗IL12/23阻害薬 JAK阻害薬 接着分子阻害薬 薬品名・器材名 分 類 表2 患者数の推移 クローン病の年度別患者数の推移 者数 167,872人 特定医療費(指定難病)受給者証所持者数 42,789人 特定医療費(指定難病)受給者証所持者数、登録者証所持者数 より作図 日本大震災の影響により、宮城県及び福島県が含まれていない。 ※安倍首相の記事は、 に掲載されています。 検 索 消化器のひろば 炎症性腸疾患 (IBD) 腸の炎症 食 薬剤の 使用増加 慣 与していると考えられること ●抗生物質 ●鎮痛剤 ●経口避妊薬 など ●欧米化 ●食物繊維の 摂取減少 など ●虫垂炎 ●感染症 など 図1 2000年 2001年 2002年 2006年 2009年 2010年 2016年 2017年 2018年 GCAP・LCAP サンディミュン レミケード イムラン プログラフ ヒュミラ ゼンタコート シンポニー ステラーラ ゼルヤンツ エンタイビオ 血球成分除去療法 カルシニューリン阻害剤 抗TNFα抗体製剤 免疫調整剤 カルシニューリン阻害剤 抗TNFα抗体製剤 ステロイド剤 抗TNFα抗体製剤 抗IL12/23阻害薬 JAK阻害薬 接着分子阻害薬 薬品名・器材名 分 類 表2 年度別患者数の推移 クローン病の年度別患者数の推移 受給者証所持者数 167,872人 特定医療費(指定難病)受給者証所持者数 42,789人 報告例 特定医療費(指定難病)受給者証所持者数、登録者証所持者数 より作図 タには、東日本大震災の影響により、宮城県及び福島県が含まれていない。 ※安倍首相の記事は、 に掲載されています。 検 索 消化器のひろば 炎症性腸疾患 (IBD) 腸の炎症 食 薬剤の 使用増加 生活習慣 環境 症に関与していると考えられること など ●抗生物質 ●鎮痛剤 ●経口避妊薬 など ●欧米化 ●食物繊維の 摂取減少 など ●虫垂炎 ●感染症 など

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