知っていればその時役立つ話-その3-

44 赤ちゃんから高齢者まで 私たちは皆ワクチンで守られています。 私の家族は大丈夫??うっかり忘れていないか、今一度確かめてみましょう! マンスリー済衆館だより 希望 第137号(2018年8月号)より ワクチン接種の意義 ワクチンとは、病原体(ウイルスや細菌)あるいは病原体の出 す毒素の毒性を弱めたり、なくしたりしたものです。 これを接種しておくと、病気を発症せず、病原体に対して体の 中に免疫の記憶を残すことが可能になります。 つまりワクチン接種により、あらかじめ免疫記憶をつけておけ ば、いざ本当の病原体が体の中に入ってきたときに、素早く免疫 によって体が守られ、病気にかからずにすむというわけです。 現在ワクチンで予防できる病気は、20種類以上あります。 【ウイルス感染症】 B型肝炎・ロタウイルス胃腸炎・麻疹・風疹・おたふくかぜ・水 痘・日本脳炎・ヒトパピローマウイルス感染症・インフルエンザ・A 型肝炎・狂犬病・黄熱・ポリオ 【細菌感染症】 肺炎球菌感染症・百日咳・結核・髄膜炎菌感染症・インフルエ ンザ菌b型感染症・ジフテリア・破傷風・腸チフス・コレラ ワクチンによる個人防衛と社会防衛 個人防衛:ワクチンを受けた人がその病気から守られる。 社会防衛:多くの人がワクチンを受けることによって社会全体 からその感染症が減り、結果としてワクチンを受けてない人たち も病気から守られる。 ワクチンと医療経済 ワクチンにかかる費用は、ワクチン接種せずに病気にかかって しまった際の検査や治療にかかる費用に比べて圧倒的に安くす むことが分かっています。 自然に感染した方がいいのでは? 麻疹や水痘などの感染力の強い感染症では、一度かかってし まえば一生続く免疫ができるので二度とかからないと考えられ ています。 そこで、ワクチンを接種せずに自然にかかってしまえば、その 方がより自然で良いのではと考える方もいるかもしれません。自 然にかかった場合は、強い免疫を獲得できることが多いですが、 一方で病気を発症することによって、ときに起こるいろいろな合 併症(脳炎や肺炎など)を起こす危険もあるわけです。また、自 分が病気にかかることにより、周りの人にその病気を広げてしま うこともあります。 したがって、自然にかかり合併症を起こすリスクと、ワクチン接 種により自然感染を避けることができるメリットを考えれば、やは りワクチンで予防できる病気はワクチン接種で予防するのが最 善の方法であると言えるでしょう。 ワクチン接種のメリット ワクチン接種が普及して感染症自体が減少してくると、ワクチ ンで感染症を予防することのメリットは見えにくくなってしまいま す。一方副反応などのワクチンのデメリットが目立つようになっ てクローズアップされやすくなります。 ワクチンで予防できる病気が増えた現在、ワクチンの意義に ついて正しく理解して、ワクチンのメリットとデメリットについて冷 静に判断する必要があります。 最近流行にて注目された麻疹(はしか)ワクチンについて 麻疹 麻疹は空気感染を起こす感染力の強い麻疹ウイルスの 感染により引き起こされる病気です。二峰性の発熱、咳、体の発 疹などの症状を起こします。合併症として肺炎や脳炎などを起 こすこともあり、後遺症を残したり死亡することもあります。 東南アジアを中心に流行しており、世界では今でも毎年約16万 人が麻疹で亡くなっています。 麻疹ワクチン 生ワクチンであるため妊婦には使用できませ ん。 接種後は2カ月間避妊が必要です。 生ワクチンであるため接種後は1カ月間他のワクチン接種がで きなくなります。 ワクチン製造過程でニワトリの胚細胞を使用していますが、卵の タンパク質の含有量は極めて少ないため卵アレルギーがあって も接種可能です。 現在の定期接種 1回目:1歳 2回目:年長(5~6歳) 麻疹ワクチンと患者数 日本では1978年麻疹ワクチンの定期 接種(1回接種)が開始され、2006年には2回接種になりまし た。 2008年1万人を超える麻疹の流行があったため、ワクチン2回 接種徹底のために特別処置(2008年~2013年まで)として中 学1年生、高校3年生を対象にワクチン接種実施されました。 これにより2015年には麻疹患者は年間15人にまで激減しまし た。 しかしその後も海外からの持ち込みによる散発的な流行が見ら れています。 麻疹ワクチンの効果 免疫獲得率:1回接種後93~95% 2回 接種後97~99% 愛知県での今年の流行でも感染者の多くがワクチン未接種あ るいは1回接種のみでした。 妊娠を希望される女性およびご家族・パートナーの方へ 妊娠中に感染すると母体が重症化したり、胎児に感染して流 産や早産のリスクになる感染症がいくつかあります。その中には ワクチンにより予防できる感染症もあります。妊娠を希望される 女性はあらかじめこれらのワクチンを接種しておくことが、元気 に赤ちゃんを産む上で非常に重要です。 ただし、妊娠中に生ワクチンを接種することはできません。(イ ンフルエンザワクチンなど一部の不活化ワクチンは妊娠中も接 種可能な場合があります) そのため、生ワクチンで予防できる感染症(麻疹や風疹、水 痘など)については、特に妊娠前に免疫をつけておく必要があり ます。母体が事前に免疫をつけておくことは、生まれた乳児の感 染または重症化を予防することにもなります。 また、妊婦のみならず、乳児を囲む家族(配偶者や同居され ている方)も免疫をつけておくことが重要です。 ワクチン接種についてご不明な点がありましたら、かかりつけ の医師にご相談ください。 また、一般社団法人プライマリ・ケア連合学会のホーム ページに『こどもとおとなのワクチンサイト(https://www. vaccine4all.jp/)』が開設されていますのでご参照ください。

RkJQdWJsaXNoZXIy NDY3NTA=