知っていればその時役立つ話-その3-

43 若い時より気を付けていれば予防できる「外反母趾」 ハイヒールを長時間履くことによって起こる病気 マンスリー済衆館だより 希望 第136号(2018年7月号)より もともと外反母趾は草履や下駄を使用していた日本人にはあまり見 られず靴の歴史の長い欧米人に多い病気でしたが、靴の普及した現 代では日本でも急速に増えています。 足の母指(親指・母趾)の先が人差し指(第2趾)のほうに「くの字」 に曲がり、それによってつけ根の関節の内側の突き出したところが痛 みます。その突出部が靴に当たって炎症を起こして、ひどくなると靴を 履いていなくても痛むようになります。また母趾が変形し、痛みがない けれど母趾が第2趾と重なり第2趾が上を向いたり、変形して第2趾や 足の裏に魚の目が出来て痛みが出るという場合もあります。 外反母趾の一番の原因は靴を履くことです。幅が狭くつま先が細 くなった靴を履き続けると母趾のつけ根から先が圧迫されて変形しま す。ヒールの高い靴は指のつけ根にかかる力が増えてさらに変形を 強くします。10歳代に起こるものは母趾が第2趾より長かったり、生ま れつき扁平足ぎみであったりすると外反母趾になりやすい特徴があり ます。最も多い中年期のものは履物に加えて、肥満と筋力低下などに よって起こります。 健常な足には縦のアーチだけでなく横のアーチがあります(左図)。 外反母趾ではこれらのアーチが崩れて扁平足・開帳足になると、中ほ どにある母趾の中足骨が扇状に内側に開き、それから先の指は逆に 靴で外側に圧迫されて「くの字」に曲がる変形がおこるのです。 予 防 1.母趾のつけ根はフィットして先はゆったりとした履物を選ぶ。ただブ カブカで靴の中で足が動くようではいけません。靴擦れになります。 2.足の指のすべてを開く(グ、チョキ、パー)ような、指の体操を毎日行 い足の筋肉の動きをよくしておくことが大切。 3.母趾と第2趾の間に装具をはめる。 ※特に若い女性はファッションの一環としてヒールの高い靴を履きた いと思いますが、長時間履き続けることが外反母趾を助長すること になりますので、長い時間履き続けることや連日履くことはなるべく 避け、履いたあとは足の指を開く運動をしっかりするなど(2,3)予防 をして頂きたいと思います。ファッションも良いですがひどい外反母 趾になると歩きにくくなったり将来的には見た目も悪くなります。 治 療 1.テーピングや装具で固定する 2.リハビリで足の筋肉をやわらかくする 3.消炎鎮痛剤で痛みを和らげる ただしこれらの治療は症状緩和や更なる悪化を防ぐことが目的であっ て根本的に変形を直すことは困難です。 手 術 変形が進むと指についている筋肉も変形を助長するように働き、体 操や装具ではもとに戻らなくなります。痛みが強く、靴を履いての歩行 が辛くなると手術が必要になります。 外反母趾の手術法にはいろいろありますが、最も一般的なのは中 足骨(指よりも足首に近いところの骨)を骨切りして矯正する方法で、 変形の進行程度により方法も異なります。当院でも矯正骨切り手術を 行っています。入院していただき半身麻酔下に1~2時間の手術を行 います。変形が高度で母趾と第2趾が重なってしまい第2趾も変形を きたしている場合はその指に対しても何らかの手術を加える必要があ ります。手術の翌日からは踵をついて移動が可能です。その後は足の 先の部分に体重がかからないようにするための特殊なサンダルを履 いて歩行していただきます。従来の靴が履けるようになるには2~3ヵ 月ほどかかります。手術後は再発防止のためにつま先が広めな靴を履 く方がよいです。 初期の症状ではテーピングや足のストレッチ、靴の選択である程度 の回復が見込まれます。今はインターネットが普及しておりテーピング やストレッチの仕方なども検索できます。他に通院しているけれど改善 しない場合や変形が重度な場合は手術療法も検討できますので整 形外科外来にてご相談ください。 外反母趾の方はどんな靴を選んだらよいでしょうか? そのサポートを私たち義肢装具士はさせていただいています。 外反母趾用の足底装具(アーチサポート)の製作でもっとも私 達が注意していることは、使用される方に応じた適切な足底アー チの再現(崩れたアーチの修復)と保持です。 製作の際に私たちはさまざまな方法で患者さまの足の形状を再 現し、崩れたアーチを正しく保たれるように修正し足底装具(アー チサポート)を提供させていただいております。 極端に高すぎるアーチや、アーチの位置がずれている足底装具 (アーチサポート)を使用していると痛みを助長したり、水泡(水 ぶくれ)ができたりします。逆にアーチが低すぎるものでは良い アーチの修復効果を生むことができません。 また、足底装具(アーチサポート)と併用する靴も非常に重要 で、基本的にはつま先と靴底がゆったりした幅広の靴が良く、ある 程度靴の本体がしっかりしたもので足が靴の中で遊ばないように 紐やマジックベルトでしっかり固定できるものが望ましいといえま す。その他には、靴の差高(つま先と踵の高低差)が1㎝以上、3 ㎝以内が理想的です。 ハイヒールのように差高のありすぎる靴は姿勢を崩し外反母趾 を助長しますので、どうしても履かなければならない 時以外は避けていただいたほうが良いでしょう。 外反母趾体操(足の指を開く運動) 制止時 開いた時(バーの時) 外反母趾用装具 手術例 ① 第2趾が母趾と重なって 高度の変形があります 手術例 ② 過去に手術を受けられ ましたが再発したとのこと 軽度 中等度 重度 超重度 外反母趾体操(足の指を開く運動) 制止時 開いた時(バーの時) 外反母趾用装具 手術例 ① 第2趾が母趾と重なって 高度の変形があります 手術例 ② 過去に手術を受けられ ましたが再発したとのこと 軽度 中等度 重度 超重度 外反母趾体操(足の指を開く運動) 制止時 開いた時(バーの時) 外反母趾用装具 手術例 ① 第2趾が母趾と重なって 高度の変形があります 手術例 ② 過去に手術を受けられ ましたが再発したとのこと 軽度 中等度 重度 超重度 術 前 術 後 術前 術 後 術 前 術 後 術前 術 後 術前 術後 術前 術 後

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