知っていればその時役立つ話-その3-

41 ご存知ですか? 心臓病に心臓リハビリテーションが有効と マンスリー済衆館だより 希望 第134号(2018年5月号)より 心臓の病気をしたらリハビリテーションにより少しでも快適で再発しない生活を目指したいですね 心臓病にかかったらなるべく心臓に負担をかけないように安静にして過ごす方がよいと考えている方も多いのではないでしょうか。 また患者さまご自身も発作への不安や動くと苦しいという自覚症状から必要以上に運動量が減少してしまっている場合も多いよう です。 もちろん心筋梗塞直後やコントロールできていない狭心症、不整脈などの診断がつき、治療により安定した状態になるまで医師か ら安静を指示されている場合など運動が制限されることもありますが、最近では心臓の病気にかかったらなるべく治療の早期から心 臓のリハビリテーションを開始して運動能力(運動耐容能)の低下を防止し、更に改善させることで、症状を緩和し長期予後を改善 できることが分かってきています。また多くの心臓の病気では動脈硬化のもととなる危険因子(高血圧、糖尿病、高脂血症、肥満、喫 煙など)が病状の悪化や再発に大きく関係していることが分かっており、その危険因子のコントロールや動悸や不整脈に関連してい る自律神経の安定化も心臓リハビリテーションの目標となります。 心臓リハビリテーションはその実施時期から急性期、回復期、維持期に分類されます。 ●急性期リハビリテーション 心臓疾患を発病したり増悪したりして入院後、なるべく早い時期から急性期の治療と並行して行われ、段階的にリハビリでの活動 量を増やしていきます。日常生活の自立が目標となります。 ●回復期リハビリテーション 主に入院監視下~外来監視下(リハビリ室)で行われる回復期早期と外来監視下~在宅非監視下で行われる回復期後期とにさら に分類され、回復期早期では主に入院中に運動耐容能(どれだけ運動できるか)の評価をした上でそれぞれの方に適した運動強度で の運動を段階的に進めていくほか、栄養指導、生活指導を含め今後の生活について総合的に評価指導を行い退院、家庭復帰を目指 していきます。回復後期では社会復帰や復職を目標として運動療法や今後再発を防ぐ取り組みを外来や自宅で進めていきます。 ●維持期リハビリテーション 生涯にわたる快適な生活の維持を目的に行われ、在宅あるいは地域の運動施設などで運動療法を維持する一方再発予防のた めの食事療法や禁煙を続けます。 当院に心不全などにて入院された方の急性期、回復早期、回復後期、維持期の心臓リハビリテーションはもちろんの事、近隣の三 次病院で急性期の治療および急性期心臓リハビリテーションを受けられた方々の回復期、維持期での心臓リハビリテーションについ ても医師、看護師、理学療法士、薬剤師、栄養士、臨床検査技師を含めたチームで対応し、地域の皆さまの心臓疾患罹患後の予後 の改善を目指し今後も力を入れていきたいと考えております。 心臓病を患い、元の生活により早くより良く戻るために 早期のリハビリテーションが望まれます 心臓リハビリテーションのイメージと言っても、整形外科や脳卒中後のリハビリテーションと違い、外見では見えにくい疾患なのでな かなかイメージしづらいと思います。しかし、心臓疾患により心臓の機能が低下すると、身体の隅々まで十分に血液を送り出すことがで きなくなり、特に活動量が上がれば上がるほど筋肉に多くの酸素を送る必要があるため心臓が弱くなれば疲労感が増し、活動量が制 限されることにより運動機能も低下し体力が衰え、ますます活動量の低下を招いてしまいます。心臓リハビリテーションは、社会復帰や 職場復帰の前に、低下した体力を安全な方法で回復させながら生活面での栄養状態と服薬状況の確認を行い、精神面でも自信を つけていただくことが目的となります。 ●心臓リハビリテーションは安全なのでしょうか? 豊富な根拠に基づいて、現在では日本・米国・欧州の関連学会の疾病診療ガイドラインにおいて、心臓リハビリへの参加は「実施 すべき治療」として推奨されており安全です。更に「全ての急性冠症候群・冠動脈バイパス術(CABG)術後・冠動脈インターベンショ ン(PCI)術後患者は外来心臓リハビリテーションに紹介されるべきである」と強調されています。わが国における心臓リハビリテー ションの実施状況に関する全国実態調査はこれまでに2回実施されており、2009年に実施された全国実態調査では、循環器専門 医研修施設597施設のうち外来心臓リハビリテーション実施施設は2004年の9%から21%へと増加し ていましたが、冠動脈インターベンション(PCI)実施施設の96%に比べると依然として著しく低率となっ ており、ガイドラインで推奨されている患者教育プログラム、個別的運動処方、呼気ガス分析による運動 耐容能評価などの実施率も14~23%と低率と報告されています。すなわち、わが国において心筋梗塞 (AMI)の在院日数が大幅に短縮したため入院中の心臓リハビリテーション実施が困難になっている一 方で、退院後の受け皿となるべき外来心臓リハビリテーションの普及が追いついていない状況が明 らかである事から、当院でも心臓リハビリテーションを積極的に進めるとともに、近隣の三次救急とも連 携し退院後の外来患者さまを幅広く受け入れ、この地域の中核病院としての役割を担ってまいります。 心臓リハビリテーションをご理解の上、担当医と相談していただき、積極的に包括的な心臓リハビリ テーションを行って1日も早く快適で再発しない生活を送っていただけるよう願っております。 参考文献:米国心臓病学会(ACCF/AHA)の二次予防ガイドライン2011年版

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