知っていればその時役立つ話-その3-

4 マンスリー済衆館だより 希望 第97号(2015年4月号)より 糖尿病の低血糖をクローズUPしてみました。 厚生労働省 平成24年「国民健康・栄養調査」より なんと日本国民の約2,050万人が糖尿病有病者とその予備軍 今や私も!あなたも!という時代ですね。 血中のブドウ糖が上昇し全身に影響が出る病気ですが、その治療に当たり逆に血糖が下がりすぎる 低血糖が高血糖と並び数々の危険を伴うもので患者さまのみならず社会問題となっています。 高血糖は、脳、心臓、血管、全身の殆どの臓器に障害をもたらし、時には意識障害、痙攣など重篤な 病気を引き起こします。逆に、低血糖は薬物治療や食事量、運動量に左右され、異常に血糖が下がる 状態で、冷感、失神(意識障害)痙攣等を発症します。 【低血糖はどんな状態?(症状)】 私たちの体(細胞)は「ブドウ糖」をエネルギー源として動いています。ブドウ糖は 多様な食物に含まれていますが、特に炭水化物に多く、ごはんやパン、めん類、芋類な どのデンプン質の食物や、果物、蜂蜜などに多く含まれています。腸から吸収された炭 水化物はブドウ糖に変化して、血管(血液)の中を通りそれぞれの細胞に運ばれます。 脳は特にたくさんのブドウ糖を消費する臓器です。 低血糖とは血液中の血糖値(ブドウ糖の濃度)が異常に低下した状態のことを言い、 一般的に血糖値が50未満になると様々な症状があらわれてきます。(表1) 【低血糖はなぜ起きるの?(原因)】 低血糖は稀な病気でも起きることがありますが、実際には「糖尿病の薬」によるものが圧倒的に多いと考えられています。糖 尿病患者さまで、どのようなときに危険な低血糖発作が起きるかというと、 例1 「糖尿病の薬」は、食事を十分摂取しているときに服用することが条件であるにもかかわらず、認知症などで薬の管理が できず適当に薬を飲んでしまう場合。 例2 旅行などで普段よりたくさん体を動かしたにもかかわらず食事が十分摂取できなかったとき。 例3 胃腸風邪などで下痢したときなどです。 その他、注意すべき疾患として①インスリン産生膵腫瘍(インスリノーマと呼ばれる)②インスリン自己免疫症候群(血液中にイ ンスリンに対する抗体ができ、インスリンと抗体がくっついたり離れたりすることで重い低血糖が起きる病気。過去にバセドウ 病の治療薬を服用されていた、などの原因で起きる稀な病気)③薬剤性(ニューキノロン系とよばれる抗菌剤などさまざまな薬 剤が原因となり得ます) ④肝疾患(肝硬変など)があります。 【低血糖を避けるためにはどうしたらいいの?(対応)】 血糖値は当日の食事の内容、当日の運動量、普段の糖尿病の具合などで規定されますが服用した薬の作用は飲んだ量が同 じであれば一定の効果が体に現われます。したがって「糖尿病の薬」を服用中あるいはインスリン自己注射をされている方はな るべく1日の摂取カロリーを一定に保ち、運動量が多い時は余分にカロリーを摂取することが必要です。 【糖尿病の薬と低血糖の危険度】 日本にある「糖尿病の薬」を低血糖の危険のある薬 (*A群)と、単独使用ではほとんど低血糖の危険のな い薬(*B群)に分けて紹介します。ただし一般的に低 血糖の危険のある薬(*A群)は使われている歴史も長 く、低血糖以外の副作用がほとんどなく、これまで糖尿 病患者さまの血糖コントロール改善に大きく貢献してい ます。一方単独使用ではほとんど低血糖の危険のない 薬(*B群)は、単独では効果もマイルドで複数組み合 わせて処方されることも多い、低血糖以外の副作用の危険がある、などの特徴があることも知っておかなければいけません。 【低血糖の緊急対処方法】 外出時は必ず、糖尿病手帳、砂糖またはブドウ糖を持ち歩きましょう。 低血糖の症状が現れたらあわてずにブドウ糖10~ 15gを内服、なければ砂糖、ジュースを飲み10~15分安静にして、それでも症状が改善しないときには病院に連絡、受診してくだ さい。 【低血糖発作と自動車事故の因果関係は?】 糖尿病患者の200人に1人(約0.5%)が、低血糖による自動車事故を経験しているというデータがあります。岐阜県の糖尿 病専門医・安田圭吾氏らの研究によると、日常的に車を使用している糖尿病患者1,009人の実態調査から、93人に運転中に低 血糖の経験があり、そのうち5人(5.4%、全体の0.5%にあたる)が運転時に低血糖で自動車事故を起こしたことがあると回答 しています。また、信号無視や横断歩道に気づかないなど、「ヒヤリ・ハット」を経験している人も21人いました。 運転時低血糖の経験のある患者の中で、運転前に血糖自己測定をしている人は15%のみで、運転時の低血糖予防について 主治医から指導を受けたことのある人も約半数にとどまっています。(2006年の第49回糖尿病学会の発表資料より) 車を運転中に低血糖ではないかと思ったら、周囲の安全を確認して直ちに車を路肩に止めてください。我慢していると注意力 が鈍くなったり、ブレーキのタイミングが遅くなったり、手足を動かせなくなります。また、低血糖はいつどこで起こるかわかりま せん。薬物療法をしている人は、ブドウ糖を常に身に付けておきましょう。 糖尿病の方は、普通の方に比べて注意を要することがいろいろとあります。すこやかな日常生活を送っていただくためには、 病気をよく理解して何か異常を感じたり、お困りのことがあれば、早めに医療機関で相談するようにしてください。 *A群:低血糖の危険のある薬 ①すべてのインスリン製剤 ②すべてのSU剤とよばれる薬:ア ③すべての「グリニド」とよばれる *B群:単独使用ではほとんど低血 ①メトフォルミン(メトグルコ・メデ ②すべてのアルファグルコシダーゼ ③すべてのDPP4阻害薬とよばれ ④アクトス・ピオグリタゾン 表1 炭水化物食品 血糖値(mg/dL) 空腹感、あくび、悪心 無気力、倦怠感 計算力減退 発汗(冷汗)、動悸(頻脈) ふるえ、顔面蒼白、紅潮 意識消失、異常行動 けいれん、昏睡 *:血糖値が70程度でも急に下がった場合は症状 軽度: 血糖値50以下 ▲ 重度: 血糖値30以下 ▲ *A群:低血糖の危険のある薬 ①すべてのインスリン製剤 ②すべてのSU剤とよばれる薬:アマリール・グリミクロン ③すべての「グリニド」とよばれる薬:シュアポスト・グルフ *B群:単独使用ではほとんど低血糖の危険がない薬 ①メトフォルミン(メトグルコ・メデット・グリコランほか) ②すべてのアルファグルコシダーゼ阻害薬とよばれる薬: ③すべてのDPP4阻害薬とよばれる薬:エクア・オングリザ ④アクトス・ピオグリタゾン 表1 血糖値(mg/dL) 空腹感、あくび、悪心 無気力、倦怠感 計算力減退 発汗(冷汗)、動悸(頻脈) ふるえ、顔面蒼白、紅潮 意識消失、異常行動 けいれん、昏睡 *:血糖値が70程度でも急に下がった場合は症状/兆候が出現します。 軽度: 血糖値50以下 ▲ 重度: 血糖値30以下 ▲ *A群:低血糖の危険のある薬 ①すべてのインスリン製剤 ②すべてのSU剤とよばれる薬:アマリール・グリミクロンなど ③すべての「グリニド」とよばれる薬:シュアポスト・グルファストなど *B群:単独使用ではほとんど低血糖の危険がない薬 ①メトフォルミン(メトグルコ・メデット・グリコランほか) ②すべてのアルファグルコシダーゼ阻害薬とよばれる薬:ベイスン・セイブルなど ③すべてのDPP4阻害薬とよばれる薬:エクア・オングリザなど ④アクトス・ピオグリタゾン 表1 炭水化物食品 血糖値(mg/dL) 空腹感、あくび、悪心 無気力、倦怠感 計算力減退 発汗(冷汗)、動悸(頻脈) ふるえ、顔面蒼白、紅潮 意識消失、異常行動 けいれん、昏睡 *:血糖値が70程度でも急に下がった場合は症状/兆候が出現します。 軽度: 血糖値50以下 ▲ 重度: 血糖値30以下 ▲

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