38 マンスリー済衆館だより 希望 第131号（2018年2月号）より 忘れてはいけない感染症 結核・梅毒・エイズ 感染している人が増えてきています 結核は結核菌という細菌に感染して起こる病気です。かつて日本では「結核は国民病」といわれるほど蔓延し て、発病すると死に至る危険も高かった病気ですが、1944年のストレプトマイシンの発見に始まる抗結核治療の 進歩により治癒の望める病気となりました。治療方法の確立や生活水準/栄養状態の向上、公衆衛生対策などに より、日本での患者数は減少していますが、それでもなお年間に約２万人が新たに発病しており、他の先進国よりも 多い傾向にあります。基本的にヒトからヒトへ伝染する病気で、発病者が咳をしたときに出る細かいしぶきの中に結 核菌が含まれており、それを吸い込むことで感染します（飛沫感染）。感染しても発病する人は10％程度で、多くの 人は感染に抵抗して免疫ができますが、その後、年をとって栄養状態が悪くなったり、免疫力が落ちた時に発病す ることがあります。結核だけの特別な症状はありませんが、発熱や咳、痰、血痰、だるさ、寝汗などの症状が2週間 以上続くような場合は、早めに医療機関へご相談ください。そして、治療は伝染病ですので完治するまで必ず続け てください。排菌している場合は隔離治療をすることになります。 例年では、この時期になると冬に多いとされるインフルエンザ・ノロウイルス腸炎(実は年間を通してみられます)・ RSウイルス感染症などを中心に記事を書いてきましたが、今回はそれら感染症情報の入手方法について述べた いと思います。その前に最近増加傾向にある気になる２つの感染症について簡単にお話しします。 １つめは梅毒です。わが国では梅毒感染者が急増しており、平成29年1月から12月31日までに5,770名の新規 感染登録がありました。梅毒スピロヘータは血液や体液中に存在し、主に性交渉や疑似性交渉を契機に感染する 疾患で、末期には失明や中枢神経障害などをきたす恐ろしい病気です。近年は20代の若年層に増加傾向である ことが特徴です。 ２つめはエイズ(AIDS；後天性免疫不全症候 群)です。エイズはHIVというウイルスが白血球(T 細胞やマクロファージ)に感染することによって引 き起こされます。HIVが白血球の中で増殖し、正 常な白血球が減少するため免疫力(病原体に対 する抵抗力)が著しく低下し、通常では問題となら ないような弱毒性の病原体にも感染・重症化して しまいます。HIVはヒトの体液のうち血液・精液・膣分泌液・母乳中に多く排出され、涙・唾液・汗・尿の中には微量 しか含まれません。そのため主な感染経路は｢血液感染｣、｢性交感染｣、｢母子感染(垂直感染)｣となります。保健 所では無料検査を受けることができますので、上記のような感染機会のあった方は検査を受けることをお勧めしま す。なお、インターネット等で販売されている自己検査キットは、誤判定の可能性がありお勧め致しません。 さて、院内感染対策の一環として私ども院内感染対策委員は各種学会や研修会への参加、名古屋大学医学 部附属病院や小牧市民病院と連携して相互の視察や情報交換を行っていますが、感染症のリアルタイムの流行 状況や新しい知見はインターネットから入手することが多くなっています。 以下に感染症情報の入手先(ウェブサイト)をご紹介致します。 ❶地方公共団体や保健所：専門の感染症情報センターを設置している自治体もあります。 ❷厚生労働省感染症情報 (http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkakukansenshou/index.html):国内の代表的な感染症のみならず、海外における感染症情報もあり渡航時には チェックされることをお勧めします。 ❸外務省海外安全ホームページ （http://www.anzen.mofa.go.jp/info/search/pcinfectioninfo.html）：海外における感染症について、厚 生労働省よりも詳細に記載されており、渡航時には必読と言えます。 上記以外にも数え切れないサイトで感染症情報を得ることが可能です。しかしながら、その中には時として誤っ た情報も存在することも確かです。 皆さんや皆さんのご家族が発熱したり具合が悪くなった時、さぞかし不安になられることでしょう。巷に溢れる情 報に惑わされず、慌てて医療機関を受診する前に正しい情報を入手しましょう。 平成24年 平成25年 平成26年 平成27年 平成28年 21283 1002 875 結核患者 HIV患者 梅毒患者 20495 1106 1228 19615 1091 1661 18280 1006 2690 17625 1011 4559 25000 20000 15000 10000 5000 0 感染者数の推移 やはり結核は国民病 875 1,228 1,002 1,106 1,091 1,006 1,011 21,283 20,495 19,615 18,280 17,625 1,661 2,690 4,559 感染したら必ず治療が 必要な梅毒・エイズ
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