知っていればその時役立つ話-その3-

35 年齢と共にだんだん物がぼやけて見える事でお困りではありませんか? その原因は白内障である事が多いのです マンスリー済衆館だより 希望 第128号(2017年11月号)より ❶白内障とは 白内障の原因として多いのが加齢によるもので、一般に加齢性(老 人性)白内障と呼ばれています。初期変化を含めると、40歳代で約 40%、50歳代で約65%、60歳代で75%、70歳代では約85%、80歳 代以上ではほぼ100%に何らかの混濁が認められます。しかし混濁が ある程度進行し、視力が0.6以下に低下したものを改めて白内障と定 義すると、50歳代で約1%、60歳代で約4%、70歳代で約15%、80歳 代で約40%となります。 その他の原因として、先天的なもの、糖尿病やアトピー性皮膚炎を 代表とする全身疾患にともなうもの、外傷によるもの、ステロイドを代 表とする薬剤や毒物によるもの、その 他の眼の病気(炎症)に続いて起こる もの、放射線によるものなどが挙げら れます。水晶体が濁り始めると、水晶 体で光が散乱するため、霞んだり、物 が二重に見えたり、まぶしく見えるなど の症状が出現し、進行すれば視力が 低下し、眼鏡でも矯正できなくなります。 ❷白内障の眼の中はどの様になっているのでしょうか? 白内障は、様々な原因により、水晶体の一部または全体が混濁する 病気です。私たちの眼は、よくカメラに例えられますが、レンズの役割 をするものの一つが水晶体で、直径が約9mm、前後径は約4mmの 凸レンズの形状をしています。水晶体は 水晶体嚢のうという透明な薄い膜で包まれ ています。水晶体嚢の前方の内側には 水晶体上皮細胞があり、細胞分裂を繰 り返して生涯成長を続けますので、年齢 とともに水晶体の体積・重量ともに増加 していきます。 ❸白内障の検査 基本的な検査は、視力検査、屈折検査、眼底検査です が、細さい隙げき灯とう顕微鏡検査という細い隙間から出る光を眼球 に当てて目の組織をみる検査をすることで、白内障の診 断をすることが出来ます。 ❹白内障の治療について ごく初期の白内障は点眼薬で進行を遅らせることができる場合もあ りますが、濁った水晶体を元に戻すことはできません。進行した白内障 に対しては、濁った水晶体を手術で取り除き、眼内レンズを挿入する 方法が一般的に行われます。 ❺白内障手術について 手術は局所麻酔で顕微鏡を使って行います。手術の前に消毒で眼 を洗うため、消毒の刺激感がありますが、手術に入ってからの痛みは ほとんどありません。 最近の手術は3mm以下の創きずから超音波で振動する吸引管を挿入 し、水で眼内を膨らませながら超音波の振動で水晶体を少しずつ削っ て吸引除去します(超音波水晶体摘出術)。そして残した水晶体の薄 い膜の袋(水晶体嚢)の中に眼内レンズを挿入する方法が主に行わ れていますが、進行した白内障は手術が難しく、ほかの手術方法が選 択される場合もあります。 ❻では、この眼内レンズについてお話します 眼内レンズにはいくつかのタイプがあります。ほとんどが小さな切開 から挿入できる生体適合性の良い柔らかい素材(アクリル、シリコーン など)が使われています。これま では、主に透明な球面眼内レンズ が使われていましたが、最近では 視覚の質を向上させるため、着色 (黄色で青色光を抑える)、非球 面レンズが多く用いられるように なりました。着色・非球面効果は 像のコントラストがよくなり、瞳孔が大きくなる暗い場所で従来の球面 レンズよりは見え方が良くなります。また、多焦点(遠近両用)のレンズ も開発され、従来の単焦点レンズに対し、遠くも近くも見えるという老 眼対策としての利点があります。ただ、欠点も多々あり、くっきりとは見 えない・変視症が出る・何よりも保険適応外となるため高額な手術費 を要することなどにより、多焦点レンズの普及率はあまり高くないよう です。 ❼術後の見え方と注意点 無着色(透明な)眼内レンズを挿入された場合は、少し青みがかっ て見えるという感覚を自覚される場合があります。この現象は特に大 きな害はなく、多くは経過とともに慣れて感じなくなります。着色眼内レ ンズの場合は青色光を抑えているため、青みがかってみえるという感 覚はありませんが、若年の患者さまの場合は逆に黄色く見えることが あります。この現象も経過とともに慣れて感じなくなります。 眼に関連した注意点として、眼底(特に網膜の中心部である黄斑) や視神経に別の病気が隠れている場合は、手術がうまくいっても視力 が思うように回復しないことがあります。これらの病態は手術の前に 検査をしても白内障で隠れていて分からないことがあります。 術後管理の注意点として、術後一定期間は医師が処方した点眼薬 をささなければなりません。手術を受けてからしばらくは、眼の圧迫や 不潔なもの(汚れた手や水など)と接触しない様に気を付けなければ いけません。 ❽終わりに 平均寿命が延長し、高齢者が現役として活躍することの多い現代 社会で、白内障による視力障害は様々なトラブルの原因となります。 高齢化社会が進む現在、白内障は最もありふれた病気の一つとなり ましたが、白内障手術は高度な医療技術と術式の改良などにより、比 較的安全な手術となったばかりでなく、早期の視力回復・社会復帰が 可能となりました。当院では、患者さまの全身状態や合併症を各科の 専門医と連携しながら白内障の治療を受けていただけます。また、手 術室も外科や整形外科・脳神経外科・口腔外科などと並び、クラス 10000HEPAフィルターで清潔な環境の中で、日帰り手術から短期 入院と患者さまの病状に合わせた対応をしております。 今年度、当院では術者の眼となり手となる手術用機械の更新時期 となりました。まずこの春には手術用顕微鏡が新しくなりました。国内 で市販されているものとしては最高峰のグレードのもので、眼内の視 認性が非常によく、より手術が安全に行えるようになりました。 また、手術機械本体もこの秋~冬に新しくなる予定で、最新鋭機に なります。機械のパフォーマンスが良くなることにより、眼にかかる負担 を低減することが可能となります。 この機会に眼のかすみや視力低下を感じられた方は、一度眼科を 受診してみてください。視力の回復で明るい日常生活を取り戻せるよ うに願っております。 網膜 角膜 水晶体 白内障では水晶体の一部または 全体が混濁します(白く濁ります) 加齢 糖尿病 アトピー性皮膚炎 外傷 ステロイド 他の目の病気 水晶体が濁る主な原因 細隙灯顕微鏡 ・見え方の質が良い・2か所に 焦点が合う ・健康保険が適用 ・眼鏡が必要 ・ピントが甘い ・見え方になじまない ・費用が高い ・暗いところで 見えない 単焦点レンズ 多焦点レンズ 細隙灯顕微鏡 ・見え方の質が良い・2か所に 焦点が合う ・健康保険が適用 ・眼鏡が必要 ・ピントが甘い ・見え方になじまない ・費用が高い ・暗いところで 見えない 単焦点レンズ 多焦点レンズ 網膜 角膜 水晶体 白内障では水晶体の一部または 全体が混濁します(白く濁ります) 加齢 糖尿病 アトピー性皮膚炎 外傷 ステロイド 他の目の病気 水晶体が濁る主な原因 細隙灯顕微鏡 ・見え方の質が良い 2か所に 焦点が合う ・健康保険が適用 ・眼鏡が必要 ・ピントが甘い ・見え方になじまない ・費用が高い ・暗いところで 見えない 単焦点レンズ 多焦点レンズ 網膜 角膜 水晶体 白内障では水晶体の一部または 全体が混濁します(白く濁ります) 加齢 糖尿病 アトピー性皮膚炎 外傷 ステロイド 他の目の病気 水晶体が濁る主な原因 細隙灯顕微鏡 ・見え方の質が良い・2か所に 焦点が合う ・健康保険が適用 ・眼鏡が必要 ・ピントが甘い ・見え方になじまない ・費用が高い ・暗いところで 見えない 単焦点レンズ 多焦点レンズ 長所短所 長 所 短 所 長 所 短 所 長 所 短 所

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