知っていればその時役立つ話-その3-

34 当院は食材の安全性に細心の注意を払い、日本の食文化の よさを引き継ぎ、「おいしさ」や「楽しみ」を心に患者さまに喜んで いただける食事を提供しております。 今回は「日本人の食事摂取基準」を基に、栄養素(たんぱく 質・脂質・ビタミン・ミネラル)について一日にどのぐらい摂ればよ いのか、お話させていただきます。 ❶炭水化物 炭水化物は糖質と食物繊維から成っています。糖質は主に 米や小麦、芋類などの主食に多く含まれ、身体を動かすエネル ギーの元になります。 近頃若い人の間で糖質を制限するダイエットが流行っていま すが、過度な糖質制限は危険です。なぜなら脳や筋肉は糖質を エネルギー源としているからです。さらに妊娠中の方が糖質を 制限すると胎児の発育に影響を及ぼしてしまう恐れがあります ので注意が必要です。 〈炭水化物目標量は次の計算式で求められます。〉 〈計算式〉 炭水化物目標量(kcal)= 1日に必要なエネルギー(kcal)×50~60% 例)Aさんの場合 1800(kcal)×50~60%=900~1080(kcal/日) このため、900kcal~1100kcalは主食で摂ることになります。 ❷たんぱく質 筋肉、臓器、皮膚、 毛髪、血液など人体の 大部分を構成する栄 養素で、主に肉、魚、 卵、大豆製品、乳製品 に多く含まれます。不 足すると筋肉量が減っ て疲れやすくなったり、 免疫力が低下したりし ます。過剰になると、た んぱく質を分解するのに肝臓や腎臓に負担をかけてしまいます。 表❶からも分かるように、年齢、性別関係なく、たんぱく質の 目標量は同じです。 〈たんぱく質目標量は次の計算式で求められます。〉 〈計算式〉 たんぱく質目標量(g)= 標準体重(kg)×1.0~1.2(g/日) 例)Aさんの場合 標準体重49.5(kg)×1.0~1.2(g/日)=50~60(g/日) ❸脂質 脂質は身体を形成する細胞膜やホルモンの材料です。また身 体を動かすエネルギーの元となります。不足すると細胞膜が弱く なり、血管がもろくなったり皮膚炎をおこしやすくなったりします。 過剰になると肥満の原因となります。一般的にラードなどの動 物性の脂肪より、オリーブオイルやごま油などの植物性油や、青 魚に含まれる脂肪を摂るほうがよいとされています。ただし植物 性油でもマーガリンやショートニングなどに含まれるトランス脂肪 酸は、動脈硬化や心疾患のリスクを高めるため注意が必要で す。また、緑黄色野菜などに含まれる脂溶性ビタミンは、油と一 緒に摂る事で体内への吸収が良くなります。 〈脂質目標量は次の計算式で求められます。〉 〈計算式〉 脂質目標量(g)= {1日に必要なエネルギー(kcal)×20~30%}÷9 例)Aさんの場合 {1800(kcal)×20~30%}÷9=40~60(g/日) ❹ビタミン、ミネラル 「1日に野菜を350g摂りましょう」というフレーズを聞いたこと があるかと思います。350gを目標にすると、ビタミン、ミネラル、 食物繊維が適量摂取できるからです。 表❷は当院で提供している献立です。野菜や海藻で1日当たり 約350gとなっており、栄養価を計算すると、表❸になります。必要 量と見比べてみると、ほぼ満たされているのではないでしょうか。 ただし、糖尿病や腎臓病をはじめとする食事療法が必要な疾 患をお持ちの方はこの限りではありませんので、医師にご相談く ださい。 当院栄養科は入院中の患者さまの食事は薬ほど大切 4 4 4 4 4 4 4 4というこ とを信念に、お一人お一人の病状と嗜好に合わせてお出しして います。 入院患者さまの食事は当院職員の手作りです。出汁はかつお節・ サバ節・椎茸など天然の材料を使っています。米は産地が分かるよ うに単一の銘柄を使用し、野菜は病院周辺の農家の皆様が作ら れた新鮮な野菜を含め、国産野菜を毎日使用しております。 また、食事の工夫として飽きの来ないように和洋折衷で家庭 的な料理を取り入れたり、食材の風味・栄養を損なわないように 真空調理をしたりしています。さらには季節感を感じていただく ために旬の食材を使用 し、四季折々の行事食 を取り入れています。 また入院中に誕生月 を迎えられた方には普 通食・治療食すべての 患者さまに個別に対応し た誕生食膳をお出しし ています。誕生食はデ ザートまですべて心を 込めて手作りし、おいしいと自負しております。 ※表❶は厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2015年版)」より引用 ご自分のお食事を振り返ってみませんか? その2 健康な生活のために、わたしは1日に何をどれだけ食べるのが良いでしょうか? からだに必要な栄養量のお話です マンスリー済衆館だより 希望 第127号(2017年10月号)より 表❶ たんぱく質の食事摂取基準(%エネルギー) 12~14 15~17 18~29 30~49 50~69 70以上 13~20(16.5) 13~20(16.5) 13~20(16.5) 13~20(16.5) 13~20(16.5) 13~20(16.5) 13~20(16.5) 13~20(16.5) 13~20(16.5) 13~20(16.5) 13~20(16.5) 13~20(16.5) 目標量(中央値) 年 齢(歳) 性別 男性 女性 表❷ 食物繊維(g) ビタミンB₁(mg) ビタミンB₂(mg) ビタミンC(mg) ビタミンA ビタミンD(μg) ビタミンK(μg) 塩分(g) カリウム(mg) 鉄(mg) カルシウム(mg) 17.6 1.00 1.00 120 940 6 145 6.9 2748 9.1 537 栄 養 素 表❷の栄養量 表❸ 米飯160g 味噌汁(豆腐・葱) 南瓜と生揚げの煮物 みどりおろし 野沢菜 牛乳(100ml) 米飯160g ポークソテー(肩ロース60g) 野菜ソース(トマト風味) ひじき煮 いんげんの胡麻和え オレンジゼリー 米飯160g 茄子の煮物 人参サラダ キウイフルーツ 朝 食 昼 食 夕 食 魚の野菜味噌焼き (青身魚60g) 【誕生食膳の一例】 表❶ たんぱく質の食事摂取基準(%エネルギー) 12~14 15~17 18~29 30~49 50~69 70以上 13~20(16.5) 13~20(16.5) 13~20(16.5) 13~20(16.5) 13~20(16.5) 13~20(16.5) 13~20(16.5) 13~20(16.5) 13~20(16.5) 13~20(16.5) 13~20(16.5) 13~20(16.5) 目標量(中央値) 年 齢(歳) 性別 男性 女性 表❷ ビ ビ ビ ビ ビ カ カ 表❸ 米飯160g 味噌汁(豆腐・葱) 南瓜と生揚げの煮物 みどりおろし 野沢菜 牛乳(100ml) 米飯160g ポークソテー(肩ロース60g) 野菜ソース(トマト風味) ひじき煮 いんげんの胡麻和え オレンジゼリー 米飯160g 茄子の煮物 人参サラダ キウイフルーツ 朝 食 昼 食 夕 食 魚の野菜味噌焼き (青身魚60g) 【誕生食膳の一例】 (%エネルギー) 3~20(16.5) 3~20(16.5) 3~20(16.5) 3~20(16.5) 3~20(16.5) 3~20(16.5) 央値) 女性 表❷ 食物繊維(g) ビタミンB₁(mg) ビタミンB₂(mg) ビタミンC(mg) ビタミンA ビタミンD(μg) ビタミンK(μg) 塩分(g) カリウム(mg) 鉄(mg) カルシウム(mg) 17.6 1.00 1.00 120 940 6 145 6.9 2748 9.1 537 20 1.20 1.30 85 650 5.5 150 8.0 2500 6.0 650 18 0.90 1.00 85 500 5.5 150 7.0 2000 8.5(月経あり) 550 栄 養 素 表❷の栄養量 1日の必要量(18歳~) 男 性 女 性 表❸ 米飯160g 味噌汁(豆腐・葱) 南瓜と生揚げの煮物 みどりおろし 野沢菜 牛乳(100ml) 米飯160g ポークソテー(肩ロース60g) 野菜ソース(トマト風味) ひじき煮 いんげんの胡麻和え オレンジゼリー 米飯160g 茄子の煮物 人参サラダ キウイフルーツ 朝 食 昼 食 夕 食 魚の野菜味噌焼き (青身魚60g) 【誕生食膳の一例】 表❶ たんぱく質の食事摂取基準(%エネルギー) 12~14 15~17 13~20(16.5) 13~20(16.5) 13~20(16.5) 13~20(16.5) 目標量(中央値) 年 齢(歳) 性別 男性 女性 表❷ 食 ビ 表❸ 米飯160g 味噌汁(豆腐・葱) 南瓜と生揚げの煮物 米飯160g ポークソテー(肩ロース60g) 野菜ソース(トマト風味) 米飯160g 朝 食 昼 食 夕 食 魚の野菜味噌焼き (青身魚60g) 【誕生食膳の一例】

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