知っていればその時役立つ話-その3-

31 知っていたら適切な管理ができる 腎臓病のお話です マンスリー済衆館だより 希望 第124号(2017年7月号)より 当院では腎不全の患者さまに対し、幅広く治療を行っていま すが、腎不全のすべての方が血液透析を必要とするのではな く、血液透析を行う方はごく一部の方に限られます。それは腎不 全の程度によります。そもそも、腎不全や血液透析とはどのよう なものなのでしょうか。 今回は、腎不全と血液透析のお話をします。 腎臓って何をしているの? 腎臓はからだの排水処理場! 腎臓は血液をろ過して、からだの中にたまった老廃物や水分 をおしっことして体の外へ追い出してくれます。すなわち、腎臓 はからだの排水処理場です。それ以外にも、電解質と言われる ナトリウム、カリウム、カルシウム、リンなどのミネラルのバラン スを取り、正常な血圧が保たれるよう血圧の調整をおこない、貧 血にならないよう血液を作る指令を出し、骨を丈夫にするビタミ ンDという物質を活性化して骨がもろくならないようにします。腎 臓の障害が進みますと腎不全になり腎臓の機能が失われます。 腎不全って? 排水処理場である腎臓の働きが悪くなると尿が作られなくな り、老廃物や水分がからだに蓄積します。この状態を腎不全と いいます。同時に、腎臓の機能も低下します。たとえば、電解質 のバランスが崩れて、カリウムがたまり心臓に悪影響を及ぼすか もしれません。血圧が上がりやすくなります。貧血にもなります。 骨がもろくなるかもしれません。(骨こつ粗そ 鬆しょう症しょう・病的骨折)腎不全か らのこれらの状態は、尿毒症を引き起こします。 尿毒症って? 腎不全になると、たまった老廃物がからだに影響を与えます。 それは、からだがだるくなる、食欲がなくなる、むくみが出る、呼 吸困難になるなどの症状として現れます。この症状を尿毒症と いいます。 治療法は? 腎不全が軽いうちは食事療法により老廃物や水分がからだ にたまるのを防いだり、内服薬にて老廃物や水分を出しやすくし ます。また、電解質のバランスを整える薬や貧血を改善する薬を 用います。しかし、排水処理場が完全に操業をストップしてしまっ たら、食事療法や内服薬による治療をいくら行っても、老廃物や 水分をからだから出すことができません。この時に必要となるの が「血液透析」という代用の排水処理システムです。血液透析 では機械のろ過装置を用いて、不要になった水分と老廃物を体 から取り除き、必要な成分を体に補充します。しかし、血液透析 はからだの中で24時間365日働く腎臓と違い、2-3日に1度、数 時間だけからだを浄化する治療であり、大半の治療を行ってい ない時間帯は老廃物や水分がたまる一方です。そのため、2-3 日に1度、決められた時間の治療を続けなければなりません。血 液透析でどれくらい浄化を行うかは、からだの中の腎臓と違い、 体外の機械での治療ですから、われわれが計算して設定を行い ます。また、からだと血液透析の機械をつなぐシャントと呼ばれる 特殊な血管が必要です。血液透析が必要な方はあらかじめ手 術でシャントを作り身体症状の状況で透析治療が始まります。し かし、週3回3~4時間程度の透析治療だけでは腎臓機能を補う ことはできません。 腎不全の方は、日々の食生活が非常に重要となってきます。 具体的にはカリウムやリン、タンパク質といった栄養素を制限し た「食事療法」が必要となります。腎不全になるとこれらが排泄 できず、からだにたまって悪さをするため透析療法と食事療法 が必要となります。食事の内容については患者さまの状態に応 じたメニューを管理栄養士がご指導いたします。 腎不全の時におこる貧血を改善するためには、赤血球の産 生を促進する薬剤(エリスロポエチン製剤)にてコントロールを 行います。骨がもろくなることに対して骨に働くカルシウムの吸 収に大切なビタミンD3製剤が使われます。また、血圧の上昇に は降圧剤や高カリウム、高リン血症には各々の吸着剤を使用し ます。 ご高齢で足腰が悪く、血液透析に通院できない方はどうす ればいいでしょうか。 当院では、血液透析を行う方に限り、ご自宅まで専用車で送 迎をさせていただくサービスを行っております。また、寝たきりで 移動が大変な方に対しては「腹膜透析」といって、ご自身やご家 族がご自宅で行う透析の方法も選択することが可能です。 軽い腎不全から血液透析が必要な方まで、様々な合併症を 抱える血液透析中の方々に対して幅広く治療を行っています。 治療に精通した各科の専門分野のスタッフと連携対応を行って います。透析患者さまの救急、急性期治療から回復期、長期療 養までの入院対応および在宅支援まで対応しております。腎疾 患を心配されている方は、まず、腎臓内科外来をお気軽に受診 してください。 当院、腎透析センターでは透析機器、血液ろ過透析などの 新しい透析法に対応する機器を導入しています。今回は透析 機器の他に血液透析患者さまの全身状態の管理を目的とす る機器について当院ホームページにてご紹介いたしておりま す。詳しくはホームぺージをご覧ください。 日本の総人口の1億2691万人中〝慢性腎不全患者数は1,330万人、治療を要するレベルは600万人と され透析患者数は32万448人″検診で尿たんぱく陽性を指摘された0.5%の方のそのうち5~10%の方 が、いづれ透析治療が必要とされています。 日本腎臓学会、日本透析医学会資料より 医療用体成分分析装置 インボディS10 ポータブル超音波検査装置 Vscan Dual Probe

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