知っていればその時役立つ話-その3-

28 最近増えている 治りにくかった潰瘍性大腸炎のお話です。 マンスリー済衆館だより 希望 第121号(2017年4月号)より 潰瘍性大腸炎ってどんな病気? 大腸の粘膜に持続的に炎症がおこる病気です。免 疫、食事、遺伝などとの関連が指摘されていますが、 残念ながらはっきりと原因がわかっていません。 あの安倍晋三首相がこの病気である事を公表し てから、潰瘍性大腸炎はすっかり有名になりました。 他にタレントの若槻千夏さんや高橋メアリージュンさ ん、オリックス・バファローズの安達了一選手、プロゴ ルファーの重永亜斗夢選手なども病名を公表してい ます。 このようにあらゆる年齢層で発症しますが、発症 のピークは20歳台と比較的若く、患者数も人口10万 人あたり100人を超え急激に増加中です。長期間治 療を続けなければならないことが多く、厚生労働省 より医療費助成対象疾病(指定難病)に指定されて います。 潰瘍性大腸炎ってどんな病気? 下痢、腹痛、血便が代表的で、症状が良くなったり (寛解)悪くなったり(再燃)を繰り返すのが特徴で す。 また、発病して10年ほどすると大腸癌を合併する ことがあり、症状がなくても定期的に内視鏡検査を 受ける必要があります。 潰瘍性大腸炎の治療は? 原因不明のため完全に治すことが難しく、自然治 癒率も10%程度と言われています。そのため薬で炎 症を抑え、寛解状態をできるだけ長く維持する治療 が中心になります。 潰瘍性大腸炎の治療薬は? 軽症から中等症の潰瘍性大腸炎では、5-アミノサ リチル酸(サラゾピリン、ペンタサ、アサコールなど) という薬が特効薬です。内服、坐薬、浣腸などいろい ろな種類があり、持続する炎症を抑える効果があり ます。この薬は、症状が落ち着いても、再燃を予防す るためずっと使い続ける必要があります。 5-アミノサリチル酸が効かない場合は、副腎皮質 ステロイド(プレドニンなど)を追加します。この薬は 強力に炎症を抑えますが、副作用のためあまり長い 間使うことができません。 これらの薬で効果がない場合は、免疫抑制薬や 抗TNFα抗体薬といった特殊な薬を使ったり、血球 成分除去療法という血液透析のような治療を行った りすることもあります。 潰瘍性大腸炎で手術をすることはあるの? ですが、実際はこのような患者さまはごく一部で、 ほとんどの患者さまの生命予後は健常人と同等と言 われています。 若い人に多く、原因不明で、良くなったと思っても また再燃する、という面倒な病気ですが、薬を上手に 使って症状をコントロールすれば、先に紹介した人の ように立派に社会生活を営むことが可能です。また、 かつて言われていた食事制限は、現在では寛解期で あれば必要ないと考えられていて、日常生活にも特 に制限はありません。 まず正しく診断して、早く治療を開始することが重 要です。大腸内視鏡検査でほぼ診断が可能ですの で、血便を伴う下痢や腹痛が続く人は、すぐに検査 を受けて下さい。 手術を するのは ・薬が無効か副作用などで使えず、なかなか寛解に持ち込め ない場合 ・大出血や穿孔(腸に穴があく)などの合併症や、大腸癌の可 能性が生じた場合 腸に原因不明の炎症をおこす、炎症性腸疾患という病気があります。 その代表がクローン病と潰瘍性大腸炎ですが、今回はこの潰瘍性大腸炎についてお話します。

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