知っていればその時役立つ話-その3-

26 嚥下リハビリテーション パートⅡ マンスリー済衆館だより 希望 第119号(2017年2月号)より 今回は、パートⅠ(1月号)に引き続き嚥下の機能に関するお話 です。特に乳児から高齢者の食べ物による窒息について考えて みます。特に病気により全身の機能が低下していると年齢を問 わず、嚥下機能は著しく低下してきます。 物を飲んだり、食べている時、急に呼吸状態が悪くなったり、 苦しんだり、意識がなくなったらどうするかを考えてみましょう。 視る ここでまず顔色・唇・爪の色(顔面蒼白=チアノーゼの有無)を 見る。同時に胸郭の動きをチェック。速やかに口腔内をよく見て 誤嚥物があれば直ちに取り除く処置をします。(指で取れるもの は取る)注意:指で取れる物は掻き出しますが、その場合、術者 は歯で噛まれない様にご注意ください。 見逃せない危険なサイン:チョークサイン 自分で窒息が起きていることを知らせるサイン として、自分の喉を親指と人差し指で掴み苦しが る表情(チョークサイン)で知らせる。(万国共通) 聴く 呼吸の狭窄音の有無を、耳を喉に近づけ聴く。(呼吸が無い か、あるいはゴロゴロ音など) 同時に意識、脈の有無の確認を行います。口腔内の誤嚥物 を指で取り除けない場合はすぐに背 はい 部 ぶ 叩 こう 打 だ 法 ほう を行います。(全 国消防長会イラスト参照) 背部叩打法は、背中、肩甲骨の間を頭部方向に向かって叩く 様にします。殆どの場合はこれで異物が取れます。腹部圧迫に よる*“ハイムリッヒ法”は嘔吐や臓器損傷の危険がありますの で注意して行ってください。以上の処置は可及的速やかに行わ なければなりません。 誤嚥による窒息を起こしやすい食品 大豆、ピーナッツなどの豆・こんにゃくゼリー・ご飯の塊・餅・パ ン・カステラ・刺身など すべての食品を大きな固まりのまま飲み込むことで窒息の危険 があります。 食べる時の工夫とスピードと水分 一度に口に入れないこと、ゆっくり噛んで食べる、小さく切って 食べる、お茶やスープなど水分を含ませて柔らかくして飲み込 みやすくすることが大切です。 なお誤嚥物が取れない場合、吸引法をします。吸引器による 吸引は大変有効な処置であります。吸引は、各介護施設内・救 急車内・救急病院にて行います。 意識が回復しない場合は、上記作業を行いながらすぐに救急 搬送してください。脈が触れない場合は、心臓マッサージ・AED 又は必要に応じて人工呼吸を行います。 *“ハイムリッヒ法”(腹部突き上げ法) !○妊婦や乳児には行えません ❶患者の後ろに回り、ウエスト付近に手を回します。 ❷一方の手で「へそ」の位置を確認します。 ❸もう一方の手で握りこぶしを作って親指 側を患者の「へそ」の上方みぞおちより 十分下方にあてます。 ❹「へそ」を確認した手で握りこぶしを握り、 すばやく手前上方に向かって強く圧迫す るように突き上げます。 ❺腹部突き上げ法を実施した場合は、腹部の内臓を傷める可 能性があるため救急隊にその旨を伝え必ず医師の診察を受 けさせてください。 対象が乳児や妊婦には決して行ってはいけません。イラス トのように前かがみにさせ背部叩打法を行います。 状態が安定しても、誤嚥した物が十分取り除かれたかの確 認と後の誤嚥性肺炎を想定して必ず医師の診察をお受け下さ い。̶̶̶ 当院の診断に基づいた嚥下リハビリテーションの取り組みに ついて 摂食嚥下リハビリテーションは大別して❶食べ物を使わない 訓練❷食事に直接関与していく訓練の2つに分かれます。 ❶食べ物を使わない訓練 凍らせた綿棒を使用し口の中のマッサージをする訓練、頸部 や口腔周辺の運動、筋力訓練、嚥下体操などを行っています。ま た、特殊な訓練では飲み込みの筋力アップのため低周波の電 気を喉に直接当てる訓練や食道の入口が開きにくい患者さまに 対してバルーンカテーテルを飲み込んで頂き食道の入口を直接 ストレッチする訓練があります。 ❷食べ物を使う訓練 食事を直接患者さまに食べて頂きます。その中で食事の形 態を刻み食やソフト食など食べやすい食品に変えること。安全 に嚥下できる姿勢を提案すること。食べやすい介助の仕方を指 導することもあります。さらに患者さま毎に食事の注意事項を作 成して病室に置くことで食事介助の参考にして頂いています。 何かお困りのことがあればスタッフに遠慮なくご相談ください。 チョークサイン チョークサイン チョークサイン 新年早々に調査が行なわれた東京都では、正月三が日に食べ物を喉に詰まらせ救急搬送された方が残念なが ら、21名(20代~90代)そのうち2人が死亡されました。(他県は不明)とても残念なことです。 東京消防庁調べ

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