知っていればその時役立つ話-その3-

21 今回は“手の外科”専門より、加齢につれて出現しやすい親指の付け根の問題です。 これが母指CシーMエ ム関節症です。 マンスリー済衆館だより 希望 第114号(2016年9月号)より 手の関節も 年をとります。 母指CM関節症とは? 主に加齢が原因で、親指の 付け根のCM関節と呼ばれる 関節の軟骨がすり減ってくるも のです。(図1) どんな症状が出ますか? 物をつかんだりする際に親指に力が入ると痛みを感じ ます。特にドアノブを回したり、瓶のふたを開ける動作が困 難となってきます。進行するにつれて変形や腫れ、親指へ の力の入れづらさ、可動範囲の減少がみられます。さらに CM関節が緩んできて亜脱臼を起こして出っ張ってみえた り、新しい骨が形成されると(骨棘(こつきょく))、手で触れ ることもあります。 原因は何ですか? 多くの場合は加齢に伴うものです。ただ過去にCM関 節の骨折などをしたことがあれば、若い人でも起こり得ま す。いずれの原因にせよ、関節の表面を覆う正常な軟骨が 徐々に失われることにより、本来のスムーズな動きができな くなってしまうものです。関節はゴリゴリ擦れながらさらに劣 化してゆきます。ヒトは日常生活において親指を使う動作が 非常に多いため、どうしても酷使しがちになり悪化しやすい のです。 どんな人がなりやすい? ・女性(特に40歳以上)・肥満 ・遺伝的な素因 ・過 去にCM関節の骨折や脱臼をしたことがある ・親指に負 担のかかりやすい仕事や趣味 どのように診断する? 症状や経過についてお話しを聞き、親指から手関節の 診察をします。レントゲン写真を撮影すると、すぐに診断が できます。(図2) 治療方法は? 進行度と症状の強さによって治療方針が決まります。原 則としては、まだ初期で痛みが軽度の場合は、サポーター、 お薬・注射などにより症状を和らげます。 サポーターは、動きを制限することによって痛みを軽減し ます。関節がある程度固定されるため、安定して動作がし やすくなるという利点もあります。サポーターは生活スタイ ルによって、つけたり外したりします。(図3) 湿布薬は炎症を抑えて痛 みを緩和しますが、使い過ぎ により皮膚のトラブルを起こ すこともあるので注意が必要 です。 飲み薬も効果的です。いわゆる“痛み 止め”と呼ばれるもので、非ステロイド性 消炎鎮痛薬(NSAID)という、炎症を抑えて痛みを止める お薬や、アセトアミノフェンが主体となります。ドラッグストア でも入手可能ですし、整形外科でも処方します。 お薬やサポーターを使用しても痛みが継続する場合は、 CM関節内に注射を打つ治療があります。少量のステロイ ドと局所麻酔薬を混ぜて注入します。ステロイドも炎症を 抑えて痛みを取る作用があり、比較的長い期間効果が期 待できます。 とはいえ、飲み薬も注射も「一時的に痛みを取る」手段 であり、漫然と続けるのはよくありません。どうしても痛みが 取れず仕事や趣味、生活に何らかの支障があるようであれ ば、手術治療を考慮します。 どんな手術をしますか?回復期間は? CM関節症の手術方法は実に多数存在するのですが、 「どれが一番良い」というものはありません。術者が慣れ た方法で確実に行えば、一定の良い成績で痛みを取るこ とができます。 私が好んで行っている手術の手順は、以下の通りです。 ①大菱形骨を全部または部分的に切除(関節鏡という内 視鏡を使用することもあり。) ②ミニタイトロープという、チタン製のボタンと糸を組み合 わせた器具を親指と人差し指の中手骨の間に張って、 安定させる。というものです。(図4) この手術の最大の利点は、「自分の腱を犠牲にしなくても よい」ということです。母指CM関節症に対する手術の多く は、①の段階は共通なのですが、②の段階で、自分の手の 正常な腱を使用して、母指の靭帯を再建することが多いの です。ミニタイトロープによる方法では、これを行わずにかな り安定した関節が得られます。私は、このミニタイトロープを 2本使用してさらに安定化させる方法を採用しております。 術後1週間以内に指を動かす練習を始めており、早期の回 復が望める可能性があります。他の多くの方法は3-4週間 のギプスなどでの固定を要するため、この点でも優位であ ると考えています。もちろん術後の痛みは個人差があるた め、回復に時間がかかるケースもありますが、昨年からこの 方法を採用しておりとても良い成績を得ています。 今回は母指CM関節症とその治療についてお話ししまし たが、CM関節症に限らず手や肘などの症状で心配のあ る方は、どうぞお気軽に手の専門外来にご相談ください。 黄色矢印が母指のCM関節。 関節症により少し出っ張って いるのがわかります。 図1 正常な母指CM関節 の側面像(左)と 正面像(右)関節の 隙間がよく保たれ ている。(矢印) 進行した母指CM関節症。 関節の隙間が消失 している。(矢印) CM関節は亜脱白して 母指全体に変形が 見られる。 図2 母指のCM関節症のサポーター。 病院で処方するものもありますが、 市販のものもあります。 図3 ミニタイトロープ法(2本使用)による術後。 大菱形骨を半分切除して、関節に隙間を 作っている。(矢印) 図4 黄色矢印が母指のCM関節。 関節症により少し出っ張って いるのがわかります。 図1 正常な母指CM関節 の側面像(左)と 正面像(右)関節の 隙間がよく保たれ ている。(矢印) 進行した母指CM関節症。 関節の隙間が消失 している。(矢印) CM関節は亜脱白して 母指全体に変形が 見られる。 図2 母指のCM関節症のサポーター。 病院で処方するものもありますが、 市販のものもあります。 図3 ミニタイトロープ法(2本使用)による術後。 大菱形骨を半分切除して、関節に隙間を 作っている。(矢印) 図4 黄色矢印が母指のCM関節。 関節症により少し出っ張って いるのがわかります。 図1 正常な母指CM関節 の側面像(左)と 正面像(右)関節の 隙間がよく保たれ ている。(矢印) 進行した母指CM関節症。 関節の隙間が消失 している。(矢印) CM関節は亜脱白して 母指全体に変形が 見られる。 図2 母指のCM関節症のサポーター。 病院で処方するものもありますが、 市販のものもあります。 図3 ミニタイトロープ法(2本使用)による術後。 大菱形骨を半分切除して、関節に隙間を 作っている。(矢印) 図4 黄色矢印が母指のCM関節。 関節症により少し出っ張って いるのがわかります。 図1 正常な母指CM関節 の側面像(左)と 正面像(右)関節の 隙間がよく保たれ ている。(矢印) 進行した母指CM関節症。 関節の隙間が消失 している。(矢印) CM関節は亜脱白して 母指全体に変形が 見られる。 図2 母指のCM関節症のサポーター。 病院で処方するものもありますが、 市販のものもあります。 図3 ミニタイトロープ法(2本使用)による術後。 大菱形骨を半分切除して、関節に隙間を 作っている。(矢印) 図4

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