知っていればその時役立つ話-その3-

20 いよいよ夏本番です! 蚊に刺されて心配になる病気は? マンスリー済衆館だより 希望 第113号(2016年8月号)より 夏真っ盛りですね。夏休み中に海外へ旅行、あるいは 出張をされる方も多いと思います。楽しい旅行の前に水 を差すようではありますが、今回は海外旅行に関連する ウイルス感染症*¹の話をします。 日本脳炎 日本脳炎は日本脳炎ウイルスによって引き 起こされる疾患で、主にコガタアカイエカによって媒介 されますが、人から人への伝染はありません。わが国 では年間10例ほどの発症がみられます。感染者の1,000 人に1人の割合で発症します。症状は突然の高熱、頭痛、 嘔吐、意識障害などで、死亡率は20~40%に達し、生 存者の45~70%に精神障害などの後遺症が残ると言わ れています。 コガタアカイエカはアジア地域と太平洋西部の一部、 特に田園地帯に分布し、これらの地域で蚊に刺された方 は感染の危険性があります。 この病気はワクチンによってほぼ確実に予防できま す。しかし、平成17~21年度まではワクチン接種の「積極 的勧奨の差し控え」*²が行われたため、この間に生まれ た方は接種を受ける機会を逃していることがあります。 母子手帳を確認して頂き、もし未接種であれば接種して 頂くようお願い致します。 日本脳炎の予防接種の、標準的な接種スケジュール ただし、公益社団法人日本小児科学会によると定期接 種の1期として希望すれば生後6か月以上あればいつで も接種可能となっています。 ジカ熱 ジカ熱は、ジカウイルスがネッタイシマカ (日本には常在しません)やヒトスジシマカ等によって 媒介される疾患で、中南米で多く報告されています。ウ イルスに感染しても無症状、あるいは症状が軽く気付か れないこともあります。蚊に刺された数日後に軽度の発 熱、発疹、結膜炎、関節痛、筋肉痛、頭痛、倦怠感などの 症状がみられます。ジカ熱は、人から人への伝染はあり ません。 妊娠中にジカウイルスに感染すると、胎児に小頭症な どの先天性障害を起こすことがあるため、妊婦さんは 流行地域への渡航を避けるべきです。 デング熱 デング熱はデングウイルスの感染による疾 患で、突然の高熱、頭痛、結膜充血、筋肉痛、発疹が主 な症状です。主としてネッタイシマ カによって媒介されますが、日本国内 ではヒトスジシマカも媒介します。 人から人への伝染はありません。熱 帯や亜熱帯の全域(東南アジア、南ア ジア、中南米、アフリカ、オーストラリア、南太平洋の島な ど)で報告があり、2014年には台湾で1万5,732人の患 者が出ました。日本国内では、流行地で感染後に帰国・ 発症した症例が毎年200例前後あります。ウイルスに対 する特異的な治療はなく、対症療法となります。比較的 予後は良好な疾患で、すべての症状は1週間程度で回復 しますが、ごく稀にショックと出血症状を伴い致死的とな る場合があります。 その他の海外旅行に関するウイルス感染症など エボラ出血熱 エボラ出血熱は、エボラウイルスの感 染によって引き起こされ、必ずしも出血症状を伴うわけ ではないことなどから、近年ではエボラウイルス病と呼 ばれることが多くなっています。前の3疾患とは異なり人 から人への感染する疾患で、感染者の体液(血液、分泌 液、吐物、排泄物)や、それら体液に汚染された物質(注 射針など)に直接触れた際に、ウイルスが傷口や粘膜か ら侵入して感染します。しかし、インフルエンザのように 咳やくしゃみで簡単に移ることはないと考えられていま す。 通常7~10日の潜伏期を経て突然の発熱、頭痛、筋 肉痛、咽頭痛等で発症し、次いで嘔吐、下痢、出血(吐下 血)などの症状が現れます。流行地域はアフリカに限定 されており、特に西アフリカ3ヵ国(ギニア、リベリア、シエ ラレオネ)に関しては日本の外務省が渡航の際の注意を 呼びかけています。発症した際の致死率は60~90%に 上りますが、特異的な治療法がないため対症療法や全 身管理が行われているのが現状です。 海外旅行をされる際には、これら感染症に関する情報 を旅行会社やインターネットから収集することをお薦めし ます。当該地域では防虫剤の使用や肌の露出を避けるこ とが重要です。日本に帰国後も国内での蚊による伝播を 防止するため、蚊に刺されないように注意しましょう。ま た、現地で体調を崩された方や蚊に刺された方は、帰国 時に必ず空港の検疫所にご相談下さい。 *1 出典:厚生労働省ホームページ,国立感染症研究所ホームページ,公 益社団法人日本小児科学会他 *2 予防接種後に重い病気になった事例をきっかけに案内を控えていた 3歳のときに2回(6~28日の間隔をおく) その後おおむね1年の間隔をおいて(4歳のときに)1回 1期接種(計3回) 9歳のときに1回 2期接種(1回) 厚生労働省ホームページより 3歳のときに2回(6~2 その後おおむね1年の間隔をおいて(4歳 1期接種(計3回) 9歳のときに1回 2期接種(1回)

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