知っていればその時役立つ話-その3-

19 子供の頃の水ぼうそう・大人になってからの帯状疱疹の予防に ワクチンの2回接種の効果をご存知ですか? マンスリー済衆館だより 希望 第112号(2016年7月号)より 水ぼうそう(水痘)は、子供の頃にかかり一生免疫が付くと思われていますが、治癒後も水痘・帯状疱疹ウ イルスは神経節などに潜伏しており抗体が消えれば再発生する可能性が高い病気です。免疫力が低下した時 (過労や怪我、ストレス、病気、手術、免疫抑制剤の使用中など)帯状疱疹が発症することがあります。 最近では、自然感染のみならずワクチンが開発されて予防、重症化に対応できるようになってきました。 水痘ワクチンは1974年に故高橋理明博士らにより開発された国産ワクチンです。米国では1996年に定期接 種が開始され、1999年には小学校入学の条件として水痘ワクチン接種が法律で規定されました。これにより 水痘患者数が1995年と2000年を比較しておよそ7割減少していました。 水痘ワクチンの開発国である日本においては、2014年10月にようやく定期接種が始まりました。 1回目を1歳になったら接種し、その後3ヵ月以上(標準的には6~12ヵ月)の間隔をおいて2回 目を接種します。日本では、定期接種化され小児科の入院例(重症例)が過去10年で最も少なくなっていま す。厚生労働省健康局予防接種室から出されている『水痘ワクチンの接種対象者および接種方法について』 によると水痘ワクチン接種後の抗体の保有率が1回目 85.7%、2回目を1回目接種の3ヵ月後に接種すると 99.6%と大きく上回ると報告されています。 なぜ水痘・帯状疱疹ワクチン(生ワクチン)2回接種が必要なのでしょうか 水痘は多くの場合、合併症なく治癒するウイルス感染症です。しかし、一部に皮膚の*細菌性二次感染症を 合併したり、脳炎・脳症や脳梗塞などの中枢性神経合併症といった重篤な合併症をきたす場合があります。 また免疫不全の方が感染すると致死的な経過をたどることもあります。そのため、ワクチンによる水痘予防の 意義は高いです。また、最近の報告では小児期の水痘ワクチン接種が後の帯状疱疹発生頻度を低下させる という報告もでてきています。 水痘を発症すると水疱がすべて痂皮化(かさぶた)するまで学校保健法により登校することが禁止されてい ます。この間およそ5~6日間、患児看護のため保護者は仕事を休まざるを得ません。共働きの家庭の増えた 近年においては保護者の負担ならびに経済的損失も大きく、水痘ワクチンについて費用対効果の観点からも 有益であると思われます。 *細菌性二次感染症としては劇症型溶連菌感染症があります。 原因としては、水痘に罹患すると免疫力が低下し、水疱形成崩壊による皮膚バリア機能の低下が発症に関与していると考えられてい ます。死亡率30-80% 助かっても罹患部の切断を必要することも多い極めて予後の悪い疾患です。 残念ながらまだ、日本のデーターはありませんが米国では水痘ワクチン普及により水痘に伴う劇症型溶連 菌感染症は27%から2%に激減しています。水痘ワクチン2回接種により、1996年から水痘ワクチン1回の接 種が定期接種化され一旦、水痘患者が著明に減少しました。しかし、2004年頃から再び水痘患者数が増加 に転じるようになりました。これは水痘ワクチン接種した後に水痘を発症(以下ブレークスルー水痘)する例 が増加したためでした。さらにワクチン接種した人がその後、水痘に出会って再び免疫増強(ナチュラルブース ター)の効果が減弱したことが原因と考えられました。それ故に、ワクチンの2回接種が望まれます。 ブレークスルー水痘は発疹の数も少なく症状は軽く済みますが感染源となりうる点で問題となります。そこ で、米国では2006年から水痘ワクチンの2回の定期接種が導入され水痘患者数は再び減少しています。 大人になってからかかる帯状疱疹の話を聞かれたこともあると思いますが、帯状疱疹はしつこい強い痛みに 長期間に渡って苦しむ方もあります。水痘ウイルスの免疫が十分確保されていれば発症しにくくなりますので、 一生のメリットでもあります。ご不明な点等ございましたら、お気軽に医師・看護師にご相談ください。

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