知っていればその時役立つ話-その3-

17 C型肝炎治療の更なる耳寄り話 第2弾 C型肝炎ウィルスの新しい治療法について マンスリー済衆館だより 希望 第110号(2016年5月号)より 昨年8月にもこの欄に“肝炎ウィルス治療の最近の話題”として最近の情報を提供し ました。ここ1年弱の間に次々と新しい事実が判明しました。前回の記事と出来るだけ重 複しないように説明したいと思います。 1992年から使用できたインターフェロンはそれなりに有効でしたが、発熱、全身倦 怠感など多くの副作用があり、注射薬でしたので入院と外来通院が必要でした。そこで 飲み薬のみで治療できないか【インターフェロンなしの治療の開発】ということになり、 2014年9月にダクラタスビルとアスナプレビルという内服薬が治療に使えるようになりました。これは日本人に 多いセロタイプ1型のC型肝炎にのみ有効ですが、腎機能の悪い透析患者さまでも投与可能という特徴があり ます。 この薬の有効率(ウィルスの消失率)は90%近いのですが、残念なことに10%位の治療失敗例があり、その 結果、C型肝炎ウィルスの耐性株を作り出してしまうという欠点がありました。また治療期間は以前の治療は 48週から72週の長期間でしたが、治療期間は24週間と短くなりました。インターフェロンと比較してさらに短 い期間で有効な治療法が求められることとなりました。 2015年の9月と11月に相次いで2つの製薬会社から、12週間だけの内服で有効率が95%以上のレジパス ビル、ソホスブビルという薬が発売となりました。特に9月に発売された薬は有効率98%以上と極めてすぐれ た成績を示しましたが、やはり2%程度ではあるものの効かない例もあることと、1日の治療代が8万円(12週 間で672万円)もすることから、今年4月からは大幅な値下げが決定され30%以上安い約5.6万円(12週間で 470万)になりました。薬価の決め方や変更の状況などは中医協(中央社会保険医療協議会)という特別な機 関で決められ、それを国が承認する形になっているため、個々の病院はこれに従うしかないのです。 前回の記事に記述した国の肝炎治療に対する助成金制度は1年ごとの見直しとなっており、薬代の高騰があ ると制度の中止や縮小がありうるのですが、3月14日の時点では平成28年度も制度が継続されるようです。今 のままならば、前年の年収にもよりますが負担額は1ケ月に1~2万円で、月初めに治療を開始すると(3ケ月以 内で治療終了となるので)3~6万円で済むことになります。【薬代だけで470万円もするので、それと比較して いかに患者さま側の負担が少ないかご理解していただけると思います。】 少し専門的なことですが、C型肝炎ウィルスにはウィルスが変異する現象があります。このために、内服薬の 中でも投薬の優先順位があって、最初の薬が無効の場合でも一定の条件が整っていると2回目の投薬が可能 となっています。この変異を検出するには普通の採血だけで良く、経済的な負担も少ないので、C型肝炎治療 を希望される方は必ず専門外来へご相談ください。 C型肝炎に限っては、新薬開発の競争は激しく、来年(2017年)の年末には8週間のみの治療で充分とい う新薬も利用できるかもしれません。一方でC型肝炎患者さまの内、半数以上の方は、この病気のことをよく 理解されず、医療機関に受診されていないと肝臓学会で報告されています。健診などでこの疾患を指摘された ら、治療するか否かは別にして、まず受診されることを強く勧めます。

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