知っていればその時役立つ話-その3-

10 腹腔鏡手術(その2) 大腸がんの腹腔鏡手術 マンスリー済衆館だより 希望 第103号(2015年10月号)より 前回(第98号・2015.5月号)は、‘腹腔鏡手術は本当に危険なのか?’と題して腹腔鏡 手術の現況について書きましたが、今回は大腸癌の腹腔鏡手術に絞って解説します。 前回のおさらいになりますが、腹腔鏡手術とは、皮膚に5mm~1cm程の穴を数個開 け、そこから専用の小型カメラと手術器具を挿入して行う手術方法です。使用する器具 が違うだけで、お腹の中で行われることは今までの開腹手術と同じです。 大腸癌に関しては、これまで海外で「開腹手術vs腹腔鏡手術」の臨床試験がいくつか行われ、安全性や手 術成績がほぼ同等であることが確認され、それに基づいて日本でも保険導入されてきました。最近になって日 本でも同様の試験が行われ、今年報告された解析によると、腹腔鏡の手術成績は開腹手術と遜色ないもの の、取って代わって標準手術になる程でもなく、またリンパ節転移や肥満が高度な場合は、腹腔鏡手術の方が やや成績が悪い、というなんともスッキリしない結果となりました。 一般的な腹腔鏡手術の利点として、以下のものがあります ●傷が小さい、つまり痛みが少ない ●腸管機能の回復が早い ●出血が少ない ●入院期間が短い また欠点としては、以下のものが考えられます ●手術時間が長い ●患者要因(癌の進行度、高度肥満、開腹手術の既往など)で難易度が大きく変わる また大腸癌特有のものとして、以下のものがあります ●横行結腸癌は他より難易度が高く、直腸癌は原則適応から外れている 大腸癌は最も腹腔鏡手術が普及している癌ですが、その手術適応は徐々に変遷しています。導入当初は早 期癌に限定されていましたが、2009年のガイドライン改定でその規制が外され、現在は進行癌でも手術でき るようになりました。また施設要因(経験や技量など)によって独自に適応を決めても良いことになり、そのた め大腸癌手術に占める腹腔鏡の割合は、0%~95%と施設により相当なバラつきがあるのが現状です。つまり いくら普及してきたとは言っても、全国的にはまだまだ過渡期なのかもしれません。 大腸癌の腹腔鏡手術に関しては、以下のことに留意する必要がありそうです ●開腹手術に相当肉薄しているが、まだ標準手術とは言えない ●施設によって手術適応にかなりバラつきがある ●患者要因によって手術の難易度が大きく変わる

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